AROでは、その活動を通して患者さんに対して新しい医療を届けることを目標としている。Duke大学のAROでは、そのミッションをTo develop, share, and implement knowledge that improves health around the world through innovative clinical research.としており、世界最大のAROとして多くの実績を残している。
本学では、平成19年から現在まで、各種専門的部署を配置し、医師主導治験に対する包括的支援を実施してきた。しかしながら、まだその目標を達成する途上にある。そこで、シーズ育成から臨床試験までの課題を明らかにすることにより、AROとしての今後の方向性について明らかにしていきたい。
医師主導治験の実施においては大きく3つのハードルが存在する。第一は、研究のゴールが明確化するということである。非臨床から臨床試験への橋渡しの難しさやP1からP2への移行を含めた研究のゴールを達成するための道筋を明確に描くことが不可欠であり、これは臨床試験が始まる前にすでに準備が十分必要である。薬事的な課題についてはPMDA相談を活用することにより解決することが可能であるが、一方で、製造承認後の販売については、いわゆる研究開発の水平分業を早期に検討していくことが必要である。
第二のハードルはAROとしての連携である。臨床試験の実施には研究者(医師)のネットワークとともに。AROに所属する臨床研究専門職により組織横断的なプロジェクトチームが構成される。加えて、AROがアカデミアとして最大の能力を発揮すべき事項は、研究者と規制当局、企業とを結びつけるということであり、積極的な連携が円滑な開発に結びつくと言える。第三のハードルは臨床試験の実施である。臨床試験の実施には適切な被験者の組入と、これを支える品質の高い臨床試験の実施という点である。品質管理活動についてはRBMからRBAと一部変更がされているが被験者保護という原則のもと試験が実施される。
臨床試験の実施における課題は常に変遷し、DXによる様々な対応も必要である。しかしながら、AROの目標についてはどのような時代においても簡単には変わらず普遍的なものである。多くの課題を乗り越えることで新しい医療を届けることを目指していきたい。