COVID-19が流行り始めた初期に、RACCO試験を担当した。無症状~軽症COVID-19患者90名をシクレソニド吸入群又は対症療法群に無作為化し、肺炎像の悪化の有無を観察する特定臨床研究である。当時の記録を見返すと、2020年1月14日にCOVID-19本邦1例目報告、3月12日にシクレソニドのin vitroの結果が報告され、3月27日にRACCO試験のjRCT公開をしている。思い返してもおかしなスピードだった。東京大学医学部附属病院臨床研究推進センターと東京大学医学部研究倫理支援室の皆様の粘り強いご指導・ご支援により、あのスピードでCRB承認を得て試験を開始することができたと深く感謝している。
当時、私は公衆衛生大学院と医薬品医療機器総合機構(PMDA)を経て国立国際医療研究センター病院呼吸器内科に戻ったばかりで、臨床研究センターにも配属されていた。特定臨床研究の経験があまりない中、RACCO試験に関わるチャンスをいただけたことは私にとってはとてもラッキーだったと思う。夜中に一人で泣きながら作業した事もあったが、被験者組入れの苦労や感染症研究特有の難しさ、私同様不慣れな研究者の支援等、沢山の経験を積ませていただいて、今でも最も思い入れのあるCOVID-19研究である。
その後も臨床研究センターで様々な支援を行う中で、薬剤の用法用量の設定根拠はこれでよいのか、データの集め方はこれが最適なのか等、臨床研究法や倫理指針を勉強するだけでは超えられない壁を感じるようになった。また、臨床医が忙しくてできない雑用をこなしているだけのように感じて、PMDAの同期に久々に会った際に「雑用係やってます」と愚痴をこぼしてしまったこともあった。その時に同期がくれた「臨床試験の支援なんて、雑用係の”花形”だよ」というポジティブな言葉に心を射抜かれて、研究支援を主体的に支援できればもっと楽しく仕事ができるのではないか、臨床試験の専門家になってみたい、という気持ちで、私は臨床薬理学の扉を叩いた。
4人の子育てと仕事の両立は度々しんどく感じることもあるが、臨床薬理学は、研究、臨床、薬剤開発、規制など、多くのキャリアパスを選択することができ、様々な方向に専門性を発展させる機会を得ることができる学問だと思う。これから臨床薬理学を学んで、人生がもっと楽しくなるだろうと思うとわくわくするばかりである。