難病は希少疾患が多く、病態解明や創薬の推進が困難であったが、昨今のアンメットニーズの高まりにより創薬活動が活発になってきている。現在、難病領域はまさに創薬研究を推進するための基盤構築が重要な時期にあり、そのためには難病を対象とした患者レジストリの構築によるリアルワールドの臨床情報と生体試料の情報収集基盤構築が有用で、またその基盤を活用した疫学解析やゲノム・オミックス解析等による病態解明と企業連携推進による創薬の促進が強く求められる。
このような背景より、2017年から日本医療研究開発機構(AMED)の研究事業の一環として難病研究の情報基盤である「難病プラットフォーム(以下、難プラ)」(研究代表:松田文彦)が構築された。難プラは、AMEDあるいは厚生労働省の難病研究班(約300)を対象に、患者レジストリの構築支援を行っている。具体的には、倫理指針や各種法令を遵守した研究実施計画書や同意説明文書のひな型や患者レジストリの運用に必要な各種手順書等のひな型を整備しており、難プラと連携した研究班には無償で提供している。特に企業によるデータの利活用を推進するためには同意書における記載内容が重要であるが、その点も留意して作成された内容となっている。また患者レジストリのデータの質を確保し利活用を推進するためには電子システムを活用したデータの管理と構造化が重要であるため、難プラでは比較的安価で企業での利活用を意識したCDISCに準拠したEDCシステムを整備している。また難プラでは難病横断的な解析を想定した項目(標準項目)や各疾患の臨床試験の主要評価項目となる項目の経時的な収集を推奨しており、各レジストリはこれをもとに収集項目の設定を行う。
これまでの活動で、指定難病338疾患の約半分をカバーする世界に類を見ない難病情報基盤が構築され、ウェブサイトでは各難病研究班のレジストリ・レポジトリのカタログ情報を公開し(https://www.raddarj.org/)、企業連携の推進を図っている。難プラでは研究班と企業をつなぐ「企業マッチング」にも取り組んでおり、最近では、製造販売後調査や患者リクルートなど、医薬品等の開発における患者レジストリの活用事例も増えてきた。今回は、難プラの活動について概説し、難病領域におけるレジストリ活用の動向について議論したい。