1.緊急承認制度の創設
今般の新型コロナウイルス感染症対策として、外国で使用許可等されているワクチンや治療薬について、厚生労働省では特例承認制度や優先的な審査等により、早期の薬事承認に取り組んできた。
一方、既存の制度では国内企業が世界に先駆けて開発した医薬品には適用できないことや、日本人の臨床データが不十分な場合には、国内治験を追加で実施しなければならないことなどの課題があることから、緊急時において、安全性の確認を前提に、医薬品等の有効性が推定されたときに、条件や期限付の承認を与える迅速な薬事承認の仕組みが必要であり、本年5月に医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第47号)が施行され、新たに緊急承認制度が創設された。
緊急承認制度の創設の背景及びその内容等について概説する。
2.オンライン治験の現状と課題
昨今の治験においては、データ収集の信頼性を担保しつつ、実地での直接的な人と人との間の接触をなるべく減らす手法を活用することが求められている。諸外国では治験のオンライン化に関する取組みが進められており、治験の効率的な実施に当たり、オンライン技術をいかに取り入れるかは極めて重要な要素となっている。
DCT(Decentralized Clinical Trial/分散化臨床試験)などとも呼ばれるオンライン治験は、例えば、遠隔地からの治験参加、非来院時データによる有効性・安全性評価、多様なツールと連携するプラットフォームによるデータ収集の効率化等により、関係者に様々なメリットをもたらすことが期待される。
しかしながら、オンライン治験の普及に向けては、規制面、技術面、運用面で多くの課題・留意点があることから、令和3年度、厚生労働省では、国内外のオンライン技術を用いた治験の実例、オンライン技術を用いた治験実施に関連する各国のガイダンスなどの情報を収集し、オンライン治験の普及に向けた課題・留意点等について整理した。その結果を踏まえ、本年度、オンライン治験を行う際のデータの信頼性確保等に関して治験依頼者等が留意すべき点について、ガイダンスの策定を進めている。
オンライン治験の現状(海外における普及状況、先進的な事例・技術、国内の規制・ガイダンス等)、オンライン治験の普及に向けた上記の厚生労働省の取組状況等について概説する。