2017年に日本腫瘍循環器学会が設立され、2018年11月に学術集会が開催されるなど、がんと循環器の両者が重なった領域に対し、がん患者における循環器疾患の治療ならびに心毒性に対する最善の医療の確立に向け、注目されている。当院でも腫瘍に関する他科からの依頼に対し、対応した担当医によりその後の管理が異なり統一した診療ができていないこと、フォローする外来がないなどの問題があり、2018年4月に腫瘍循環器外来を新設し、循環器内科の専門外来として、腫瘍に関わる全ての科との連携を行なっている。特に当院では乳腺外科からの依頼件数が多いのが特徴で、外来患者の約半数を占めている。これまでに院内勉強会の開催、院内ルールや検査フローの調整などをして円滑な連携が可能となった。学術面では多施設共同研究にも積極的に参加し、日本からのエビデンスを発信すべく、データを蓄積している。現状の課題としては、薬剤性心筋症において確立したリスク予測因子や予防法がないこと、がん患者に対する心臓リハビリテーション(CORE)、次世代の腫瘍循環器医の育成など山積している。また、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬をはじめ、新薬が続々と登場しており、これらの心血管系への影響も不明な点が多く、病態解明や治療法の開発など臨床薬理学の役割は大きい。今回は、腫瘍循環器外来開設から4年間で見えてきた新たな役割と課題について報告する。