【目的】
ワルファリンは治療有効域が狭い上、至適用量の個人差が大きいため、出血を始めとする副作用が現れやすい。また、アミオダロンとの併用によりワルファリンの作用を増強する。これまで体外循環装置を装着していない患者(Non-ECD)を対象に遺伝・環境要因を含む投与量予測式が複数報告されている。本研究ではCYP2C9及びVKORC1遺伝子多型に加え、アミオダロン投与量がワルファリン投与量に及ぼす影響について、体外循環装置装着(LVAD)患者を対象に解析した。
【方法】
大阪大学ゲノム倫理委員会で承認された「遺伝子多型および臨床情報を用いたワルファリン予測式の有用性評価」研究及び将来の研究への参加に同意したLVAD患者を対象に観察研究を行った。CYP2C9及びVKORC1遺伝子多型は市販のキット(Applied biosystems)を用いて判定した。また、アミオダロン投与量等を含む対象患者の臨床情報を用い、各因子がワルファリン投与量に及ぼす影響を解析した。Non-ECDを対象にInternational Warfarin Pharmacogenetics Consortium によって構築された予測式を用いて算出した投与量(CWD)と実際の投与量(AWD)から平均平方二乗誤差(RMSPE)を用いて、当該予測式のLVAD患者への応用の可否を検討した。有意差の判定基準は0.05とした。
【結果】
AWDとCWDの差について、AWDの20%以内であった患者の割合は、LVADとNon-ECDで有意差はなく(%; LVAD, 40.7, Non-ECD, 49.6, p=0.18)、RMSPEも同程度であった(%; 41.0, 37.0)。アミオダロンの影響について、アミオダロン 200mg/日以上(高用量)群、200mg/日未満(低用量)群及び併用しなかった群の平均AWD(mg/日; 2.2 ± 0.8, 2.6 ± 0.9, 3.4 ± 0.8)と平均CWD(mg/日; 3.0 ± 0.8, 2.6 ± 0.8, 3.4 ± 0.8)の差を比較したところ、高用量群においてのみ有意差を認めた(t-test, p<0.01)。
【結論】
Non-ECDを対象に構築された投与量予測式は、LVAD患者においても有用であると思われた。しかしながら、アミオダロン高用量群においては、AWDとCWDの乖離が大きく、アミオダロンの項を含む予測式については再考が必要と考えられた。