【目的】モガムリズマブ (Mog) は日本発の抗CCR4モノクローナル抗体であり、成人T細胞白血病リンパ腫 (ATL) 等の患者に対する治療薬である。本剤での治療に際し、Stevens-Johnson症候群や中毒性表皮壊死症 (SJS/TEN) 等の重篤な有害事象が報告されており、これらの発症リスクを予測するバイオマーカーの同定は喫緊の課題である。一方、アロプリノール等の低分子医薬品により発症するSJS/TENについては、特定のHLAアリルの関連が示されている。これらより、本研究ではMog投与による皮膚障害発症に関連するゲノムマーカー (HLA) の探索を目的とした。【方法】複数の研究連携施設においてMogの投与を受けたATL患者を対象とし、後方視的解析を行った。CTCAE v5.0でGrade 2以上の皮膚及び皮下組織障害を認めた患者を発症群、Grade 1以下の患者を対照群とした。患者ゲノムDNAを用いてHLA-A, B, C, DPB1, DQB1, DRB1アリルを同定し、発症群に関連するアリルをFisherの正確検定にて探索した。探索したアリルに加えて患者背景因子を説明変数とした多変量ロジスティック回帰分析を行った。本研究は名古屋市立大学大学院医学研究科及び各参加医療機関での研究倫理委員会の承認を得た。また、全ての解析対象患者から文書による同意を得て実施した。【結果・考察】男性74、女性61、合計135人のATL患者を対象とした。年齢中央値は67歳(範囲: 37- 87歳、年齢情報1人欠損)、急性型95、リンパ腫型20、慢性型14、くすぶり型3人であった(病型情報3人欠損)。単変量解析の結果、DRB1*14:05(+)(n=8)のみが発症群66/135人と関連する可能性が示された(オッズ比[OR]: 7.97, 95%信頼区間[CI]: 1.05-181.69)。次にDRB1*14:05(+)、性別、年齢(> 70 vs ≦ 70 歳)、臨床病型を変数とした多変量ロジスティック回帰分析を行った(n=131)。結果、DRB1*14:05(+)(OR: 10.48, 95%CI: 1.13-97.14)及び、非リンパ腫型(OR: 4.74, 95%CI: 1.43-15.72)が有意に発症群と関連した。つまり患者背景因子を平準化した解析で、DRB1*14:05アリルの有無は、Mog投与による、grade 2以上の皮膚関連有害事象発症の、独立した有意なリスク因子であることが示された。【結論】DRB1*14:05アリルを有する患者は、Mog関連の皮膚障害発症にリスクを有する可能性が示唆された。より多数例での検証的解析、及び他の本剤対象疾患での解析が望まれる。