【目的】現在行われているがん治療の中で、進行がんの根治を期待できる手段は免疫療法がメインとなる。しかし、その免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬(ICI))の有効症例はコンパニオン診断薬として使用されているmicro satellite instability(MSI) がhighの症例においても3~4割程度であり、現在新たなターゲットだけでなく、有効症例を予測するバイオマーカーの同定や治療効果を上乗せする治療薬の開発が求められている。【方法】当院でICIが投与された様々ながん患者から得られたICI投与前の血液検体をフローサイトメトリー(FCM)で解析し、全生存期間(OS)との関連を検討し、ICIの有効症例を予測するバイオマーカーの探索を行った。【結果】PD-L1+CD14+の単球が増加している症例ほど有意にOSが短いことが判明し、報告した。今回さらに解析を進め、ICI単剤投与が行われた肺がん症例において、単球を3分画に分けて、そのPD-L1の発現とOSとの間に関連が見られることが判明した。単球はCD14とCD16の発現の程度により、Non-classical monocyte(NCM:CD14low, CD16+), Intermediate monocyte(IM:CD14high, CD16+), Classical monocyte(CM:CD14high, CD16-)の三つに分類される。CMでは他の分画と比べるとPD-L1が強く発現しており、CMにおけるPD-L1発現が強かった症例は有意にOSが短いことが判明した。また、NCMの割合が少なく、CMの割合が多い症例で有意にOSは短く、逆にNCMが多い症例では有意にOS延長が認められた。単球は骨髄中で分化し、その後組織へと移動してマクロファージや樹状細胞等に分化していく。そこで、単球分画の治療介入への応用を検討するためマウスモデルで検証することとした。皮下に大腸腺がんの細胞株を接種し抗PD-L1抗体を腹腔内投与して、経時的に末梢血分画をFCMにて解析した。治療効果に応じて、著効群・延命群・無効群に分けた。ヒト患者データとは異なり治療前には明らかな差は認めなかったが、ICI治療により、著効群でNCMの比率が有意に高くなり、またCMの割合が有意に低くなった。今回はいずれも血中分画を解析したものであり、腫瘍内での分画を解析することで、単球分画と抗腫瘍効果における機序のさらなる解明に繋がる可能性がある。【結論】ICI投与症例において、単球分画とOSや有効性に関連がみられ、有効性の予測マーカーになりうる。