【目的】腫瘍関連マクロファージ(Tumor-associated macrophages: TAM)は固形癌において免疫細胞として病態に重要な役割を果たしている。本研究では、抗炎症機能を持つ消化管ペプチドホルモンVasoactive intestinal peptide (VIP)のマクロファージの機能について、大腸癌モデルで検討した。【方法・結果】マウス大腸癌CT26細胞の調整培地はRAW264.7マクロファージにおけるM2関連マーカーとVIP受容体 (VPAC)発現を増強した。さらに、VPAC拮抗薬であるVIPハイブリッドはCT26-CM処理したRAW264.7細胞においてM1関連遺伝子を増強したが、Mrc1遺伝子発現は減少して貪食能が増加することが明らかとなった。さらに、免疫不全SCIDマウスにおける皮下胆癌モデルにおいて、VPAC拮抗薬単独または抗PD-1抗体との併用により、CT26腫瘍増殖がビークル投与群と比較して有意に抑制されることが示された。また、腫瘍へ浸潤した白血球の分析では、VPAC拮抗薬はCT26-GFP細胞のM1/M2比とマクロファージの貪食能を増加させた。一方、Vipr2遺伝子のサイレンシングあるいはVPAC2の活性化は、それぞれCT26-CM処理したRAW264.7細胞の極性化に対し、真逆の影響を及ぼすことが確認された。【結論】以上より、VIPシグナルを阻害すると、M1マクロファージの極性化とマクロファージの貪食機能が亢進し、大腸癌の退縮が認められることが示唆された。