【目的】鳥取大学では、これまで創薬トランスレーショナルリサーチ(以下、TR)に関する基盤や支援体制の未整備、及び専門家の不在もあり、組織的に研究開発を推進する体制になかった。そのため、令和2年度から2年間、TRを推進するために創薬の研究開発経験を有するURAを新たに雇用して事業統括とし、地方大学でも可能な戦略的創薬研究開発支援事業を行い、TRを推進する「鳥取大学モデル」の基盤整備を行った。本報告では、「鳥取大学モデル」の概要及び課題等について報告する。【方法】創薬シーズ選定、戦略的研究費配分、研究開発推進(プロジェクトマネジメント、伴奏支援、外部リソース活用)についての「鳥取大学モデル」の一連のプロセスを振り返り、体制及び方針をまとめ、課題を考察した。【結果・考察】本事業では、創薬シーズ発掘のためのシーズ登録システムを構築し、ポートフォリオを作成した。また、URAをプロジェクトマネジャー(以下、PM)に指名して事業全体の統括を行い、研究費の戦略的配分を行うとともに、研究者と支援担当者がプロジェクトチームを形成してTRを推進する体制を整えた。発掘した22シーズは、研究・知財戦略立案、プロジェクトマネジメント等の介入を行った。うち、8シーズは重点シーズに選定し、重点的に研究費を配分した。研究費配分は、研究開発ステージに応じて評価を行い、その結果を基にPMが決定し、さらに進捗に応じて随時研究費を追加配分できる戦略的なシステムとした。学内の支援リソースは限られているため、BINDS、AMED創薬ブースター事業、あるいは橋渡し研究拠点等と協働できる体制を構築し、研究開発を加速した。PMは、研究者並びに支援担当者と定期的なプロジェクトミーティングを行い、タイムラインからの遅れや問題点を早期に把握し、リスク回避策の策定ができるよう体制を整えた。2年間の本事業では、企業導出(海外製薬企業含む)、特許出願、AMED競争的資金獲得等の成果が得られ、TR推進のため「鳥取大学モデル」の構築に繋がった。【結論】本事業を通して、PMが事業全体を統括し、研究費の戦略的配分やBINDS等の外部リソースを活用する体制を構築した。PM、産官学コーディネーター、知財担当者の支援担当者が一体となり研究者とコミュニケーションとり、リスク回避をしながら研究開発を推進した。今後は、研究開発を加速するための組織体制強化並びに支援方法のさらなる効率化を進める。