【目的】臨床研究法の施行以後、研究実施における環境が変化し、従来の倫理指針に基づく研究よりも手厚い研究支援体制が必要になっている。当施設は非臨床研究中核病院で限られたリソースを有効活用し、適切に臨床研究を遂行することが求められている。プロジェクトマネージャー(以下、PM)は、臨床研究審査委員会(以下、CRB)での審査書類の作成、契約書類の準備及び研究実施に関わる関連部署との調整など、研究開始前の業務負担が大きい。今回、PMが研究代表医師、分担医師とCRCで構成する研究事務局に参画することで、研究の円滑な実施が可能となると考え、試験的に2つの多施設共同特定臨床研究の事務局を担当したので、その活動内容と研究に与えた影響を検証した。【方法】PMが研究事務局に参加した、2019年(研究A)及び2021年開始の多施設共同特定臨床研究(研究B)において、PMが行った業務と得られた効果を評価した。【結果・考察】PMは、従来通り研究計画の立案の時点から研究に関与し、通常の業務であるCRBの審査に必要な各種書類の作成、各機関との契約の補助を行った。加えて、研究事務局として、1)各機関が有する手順書の確認、2)各機関のモニタリング実施体制の構築、3)研究対象者の選択に関する問い合わせへの対応、4)研究に関わる資材の作成や補充、5)症例報告書のデータ確認等を行った。研究Aでは当初から付随して観察研究も予定されており、この研究の完遂を目指した体制構築や情報及びデータの提供に関しての各機関の要望にも対応した。結果として、登録状況は良好で介入とデータ収集はスムーズに実施され、疾病等報告や不適合報告は研究事務局へ速やかに連絡があり、CRBでの審査及び各研究責任医師への情報共有も滞りなく実施可能であった。研究Bでは、当初、特定臨床研究に不慣れな機関も見られたが、PMが研究事務局に加わることにより、研究開始前の各機関の研究協力者からの問い合わせにも対応することができている。現在のところ、登録状況は、やや不良であるが、不適合等は発生せず実施中である。【結論】研究計画時から実施過程全般において、PMが研究事務局として直接関与することにより、研究実施中に発生した課題や各機関からの要望に速やかに対応することができた。多施設共同研究においてPMが研究事務局として活動することは、各機関とのコミュニケーションを円滑に行い、研究の効率的な実施に有用であると考える。