【目的】治験に品質管理システム(QMS)とリスクベースドアプローチ(RBA)が導入され、ICH-E8R1では特にQuality by Design(以下、QbD)の考え方が重要視されている。臨床研究においてもその重要性は認識されているが実装は十分ではない。本研究の目的は支援リソースの乏しい非中核病院におけるQbDの実装状況を支援リソースの観点に着目して調査検討する事である。【方法】非中核大学病院、国立高度専門医療センター、国立病院機構、静岡県治験NW加盟施設を対象に、支援リソースの現状とQbDに基づく研究計画書の作成支援状況を調査する「研究者主導の臨床研究における医療機関のQuality by DesignおよびRisk Based Monitoringに関する調査」を実施し、QbDの実装課題を抽出した。本研究は令和3年度AMED臨床研究推進ネットワーク事業に採択を受けて実施した。【結果・考察】QbDの実装を問う「科学的妥当性のレビュー」の実施について、非中核大学病院で約20%、国立病院等で約40%、静岡NWで約60%が「全く実施せず」と回答し、施設規模に関わらず実施している施設との二極化が認められた。研究計画書の「科学的妥当性のレビュー」を一部以上実施している施設でも、QbDの支援状況の細目質問、「無作為化の方法」「盲検化の方法」「併用禁止薬の確認」「サンプルサイズの確認」を実施していない施設が比較的多かった。研究計画書の科学的妥当性のレビューの実施と支援リソースについて、スピアマンの順位相関解析を行って結果、医師数(ρ=0.29, p=0.009)、PM/StM数(ρ=0.33, p=0.003)、統計家数(ρ=0.22, p=0.045)で有意な相関があった。また「科学的妥当性のレビュー」を「全く実施せず」と「一部~全ての研究で行っている」の2群に分けたロジスティック回帰分析では医師数(Odds比2.1, p=0.07)とPM/StMの人数(Odds比4.1、p=0.044)が科学的妥当性のレビューを実施するための独立因子であった。これらから特に医師やPM/StMが不在の医療機関においてもQbDが実装できるためのQbDの手順書、教育資材等を作成した。【結論】医療機関の役割と規模により、QbDの実装に差があることが明らかであり、QbDを実装するために必要な支援職を示した。支援職不足を補完する手順書等を作成した。