【目的】難治性の悪性リンパ腫および白血病に対してCAR-T療法が保険承認され、広く日常診療で用いられている。一方、進行・再発固形癌に対しては様々な抗原を標的としたCAR-T療法が開発されているが、CAR-T療法の実施には多くの関連部署・職種・診療科による綿密な工程管理、細やかなケアが求められる。当院では固形癌に対するCAR-T療法早期治験を安全・適切に実施することを目的に、準備・実施体制を構築したので報告する。
【方法】
造血器腫瘍に対するCAR-T療法を治験の段階から実施し、保険承認後も多くの症例を経験している既存の院内CAR-T療法チームと連携し、固形癌細胞療法チームを結成した。チームメンバーの選出、治療担当メンバーの設定、治療候補症例の抽出、細胞採取(アフェレーシス)とプロトコール治療、治験病棟とのスケジューリング管理、細胞製剤の取り扱い、関連スタッフの教育、院内管理体制について検討した。
【結果・考察】
固形癌細胞療法チームメンバーは、早期臨床試験専門病棟であるKi-CONNECTスタッフ(腫瘍内科をベースとしたKi-CONNECT専属・専任診療科である早期医療開発科医師を含む)、細胞療法に精通した血液内科医師、アフェレーシスを統括する腎臓内科医師、細胞調整施設を統括する血液内科医師、臨床研究コーディネーターユニット長とした。治療担当メンバーは、上位チームメンバーに加え、将来的に固形癌CAR-T療法が日常臨床で用いられることを想定し、対象癌腫を扱う各診療科医師も追加している。早期医療開発科医師が関連診療科のカンファレンスに参加することで、候補症例リストを作成している。プロトコール治療の実施にあたっては、アフェレーシス枠、治験病棟ベッドの確保のために、チームメンバーで日程を共有し、保険診療CAR-T療法枠との調整を行っている。Ki-CONENCTスタッフは、アフェレーシス時の入院管理、CAR-T細胞製剤の取扱いや投与、有害事象の管理体制について、人工腎臓部と血液内科病棟で研修した。また、CAR-T療法ではサイトカイン放出症候群(CRS)などの重篤な有害事象への対応も必要であり、ICU、初期診療・救急科、医療安全管理室との連絡体制も構築した。
【結論】
固形癌に対するCAR-T療法早期治験を安全・適切に実施するために、固形癌細胞療法チームを結成した。