【目的】大麻由来の高純度カンナビジオール(CBD)は、小児期発症の薬剤抵抗性てんかんの治療薬として、本邦での導入が検討されている。今回、CBDの乱用及び依存のリスクを評価した非臨床及び臨床試験を概説するともに、日本人を対象とした臨床薬理試験について報告する。
【方法】非臨床試験(GW社、未発表)及び健康成人を対象とした臨床試験のデータを検討した。臨床試験において、乱用のリスクは薬物嗜好視覚的アナログ尺度(DL-VAS)を使用し、離脱症状については、Cannabis Withdrawal Scale(CWS)及び20-item Penn Physician Withdrawal Checklist(PWC-20)を用いて評価された。臨床薬理試験は、日本国外において日本人および白人、さらにCBDの代謝酵素であるCYP2C19の表現型が異なる日本人を対象に単回および反復投与により実施し、薬物動態、安全性および忍容性を検討した。
【結果】非臨床行動薬理試験の結果から、CBD はテトラヒドロカンナビノール様の多幸感を惹起する可能性は低いことが示唆された。臨床試験において、CBD 750 mg(治療用量)の DL-VAS における最大効果はプラセボと比較して有意差は認められず(p=0.51)、陽性対照として用いたアルプラゾラム2 mgおよびドロナビノール10 mgはプラセボに対し有意差が認められた(p≦0.0001)。臨床薬理試験では、単回および反復投与ともに、最高血中濃度や薬物血中濃度時間曲線下面積において日本人と白人では差が認められず、代謝能力の異なる日本人間においても大きな差異は認められなかった。いずれの臨床試験でも重篤な有害事象は認められなかった。
【結論】CBDの非臨床及び臨床試験では多幸感を惹起する作用は認められず、先行研究とも矛盾しない結果であった。乱用のリスクを評価した臨床試験においても同様に、CBDによる乱用のリスクは陽性対照と比較して極めて低いことが示された。また、日本人と白人、あるいはCYP2C19遺伝子多型においても、CBDの薬物動態、安全性および忍容性が同等であることが確認された。(本演題は第55回日本てんかん学会にて発表した2演題の内容を統合したものである)