【目的】
使用成績調査(一般使用成績調査、特定使用成績調査)は、製造販売後の安全対策のための調査として、「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令」(医薬品GPSP省令)等に基づき、日常診療下で得られる情報を収集してきたため、従来より同意取得をせずに実施されてきた。しかしながら近年、調査結果を学会・論文等で公表することや、全例調査以外の使用成績調査への参加に対する患者の説明や同意取得を必要とする企業が散見されるようになった。そこで、国立がん研究センター東病院(以下、当院)で実施する使用成績調査における説明・同意取得に関する実態を把握するための調査を実施した。
【方法】
2022年7月時点で当院において契約中の使用成績調査38件(全例調査32件、全例調査以外6件)・21社を対象に、説明・同意取得状況等の実態を実施要綱等から後方視的に検討した。
【結果・考察】
実施要綱に学会・論文等での公表予定が記載されている調査は34件・18社であった。このうち、患者への説明や同意が必要であると記載されていた調査は11件(全例調査9件、全例調査以外2件)・8社であった。患者への説明や同意の方法は、文書同意6件、文書又は口頭同意4件、口頭説明のみ1件であり、このうち、症例報告書に同意取得の有無に関する収集項目がない調査は2件であった。学会・論文等での公表予定に関する患者説明を必要とする主な理由は、「患者の知る権利」「プライバシー保護」「公表に関する自由意思の確保」等であった。
調査結果の学会・論文等での公表予定については、従来から多くの調査の実施要綱に明記されていたものの、説明や同意を必要とする調査は近年増加傾向であった。説明や同意が必要であるとする調査は、学会・論文等での公表が実施要綱に明記されている調査の半数弱であり、その中でも説明や同意を必要とする理由や方法は企業間で多様であることが明らかとなった。
【結論】
使用成績調査における調査結果の学会・論文等での公表予定に関する説明・同意取得は、一部の企業において、それぞれの考え方に基づき様々な方法で実施されていることから、改めてその必要性や対応について産官学における議論を進め、統一的な指針の作成が必要であると考える。