【目的】
本研究の目的は統合失調症患者におけるアリピプラゾール持効性注射剤(以下、アリピプラゾールLAI)のパリペリドン持効性注射剤(以下、パリペリドンLAI)に対する有用性を評価することである。
【方法】
診療報酬請求データベースを用いてコホート研究を行った。研究対象は2015年5月1日から2019年11月30日の間に外来でアリピプラゾールLAI又はパリペリドンLAIを開始した統合失調症患者とした。アウトカムは精神科病棟への入院及びLAI治療の中止とした。Cox比例ハザード回帰モデルを用いてパリペリドンLAIに対するアリピプラゾールLAIのハザード比を推定した。
【結果・考察】
アリピプラゾールLAI及びパリペリドンLAIを開始した患者はそれぞれ244人及び98人であった。精神科病棟への入院に関するハザード比は0.96(95%信頼区間:0.45-2.09)であり、LAI治療の中止に関するハザード比は0.85(95%信頼区間:0.53-1.35)であった。
健康関連QOLをプライマリエンドポイントとしたランダム化比較試験(以下、RCT)において、アリピプラゾールLAIはパリペリドンLAIと比べて優れていたことが報告されているものの、精神科病棟への入院及びLAI治療の中止をアウトカムとする本研究においてはアリピプラゾールLAIとパリペリドンLAIの間に明確な違いは確認できず、RCTの結果を支持する結果は得られなかった。アウトカムにより相対的有用性は異なる可能性が考えられた。
【結論】
精神科病棟への入院及びLAI治療の中止のリスクに関して、アリピプラゾールLAIとパリペリドンLAIとの間に明確な違いは確認できなかった。