【目的】日本における希少疾病用医薬品の指定基準として、「対象患者数」、「医療上の必要性」及び「開発の可能性」について規定されている。その中で、特に「医療上の必要性」及び「開発の可能性」について不明瞭な点が含まれること、判断が難しい点があると考えられる。実際に、指定された希少疾病用医薬品において、どのような基準で指定されているのか明らかにすることにより、指定基準の問題点等について、検討することを目的とした。【方法】2006年 1月から2020年12月までに、日本で希少疾病用医薬品に指定された322品目を対象に、指定時の予定効能・効果又は対象疾患、指定時の医療上の必要性の評価、指定時の国内外の開発段階について、検討した。また、2022年7月31日時点で承認されている医薬品については、指定から申請までの期間を検討した。さらに、指定が取消されていた医薬品については、その理由を検討した。【結果・考察】指定時の予定効能・効果又は対象疾患について、約60%が接頭語等の縛り(「再発・難治性の・・・」「重篤な・・・」「○○遺伝子変異を有する」等)がなかった。指 定時の医療上の必要性の評価について、「既存の薬剤等に比べて著しく高い有効性及び安全性が期待」に該当するものが多くの割合を 占めた。指定時の国内外の開発段階について、海外で承認済のものが半数以上であった。指定から申請までの期間は、平均で約456日であり、180日以内のものが126品目で あった。指定が取消された理由の中で最も多かったのは、臨床試験で有効性を示すことができず、中止届出が提出されたことであった。【結論】日本の希少疾病用医薬品の指定において、指定時期が臨床開発後期である医薬品が多く、開発早期の段階から優遇措置を受けていない状況が明らかとなった 。