【目的】健常人を対象とした臨床試験の中には、閉経後女性を対象とする場合がある。閉経は、12か月以上月経がない場合と定義されている。今回経験した閉経後健康女性対象の2試験では、最終月経から12か月以上という選択基準に加え、E2≦20 pg/mL (内1試験ではFSH≧40 mIU/mLも) という基準が設定されていた。しかし、スクリーニング検査時、閉経後の定義を充足しているにもかかわらずE2が20 pg/mLを超える被験者が多数存在することが明らかとなった。そこで、閉経後健康女性のE2、FSH及びそれらに関連するデータの解析を行い、これらの設定値が閉経の選択基準として妥当であるか検討した。
【方法】問診にて最終月経から12か月以上とされた、閉経後健康女性被験者 (年齢:45-65歳、239名) のスクリーニング検査時の問診や検査結果を用いて解析した。E2とFSHの分布範囲は、中央値の95%信頼区間を算出した。また、E2と年齢や閉経後年数との関係等についても比較した。
【結果・考察】E2は、平均値23.2 pg/mL、中央値17.8 pg/mL、中央値の95%信頼区間は14.0-100.8 pg/mL (n=239) で、71例 (29.7%) が20 pg/mLより高値だった。FSHは、平均値88.4 mIU/mL、中央値82.9 mIU/mL、中央値の95%信頼区間は27.0-149.8 mIU/mL (n=73) で、4例 (5.5%) が40 mIU/mL未満だった。E2と年齢及び閉経後年数を比較すると、年齢及び閉経後年数の増加に伴い低下していくことが示された。しかし、妊娠可能性が非常に低いと考えられる61歳以上又は閉経後11年以上経過した被験者でも、それぞれ45例中9例 (20%) 、54例中12例 (22%) が20 pg/mLを超えており、閉経の定義を充足するがE2の選択基準設定により試験への組み入れができなかった。また、E2は測定試薬によって閉経後の参考基準値は大きく異なり、精度管理調査の結果からも、各施設及び測定試薬・機器によって値のばらつきが大きいことが確認された。以上より、E2に対して一律の選定基準値を設定するという閉経後の被験者選定方法について、見直す必要があると考えられた。
【結論】今回、閉経後健康女性のE2とFSHの分布範囲、及び年齢や閉経後年数等の関係について解析を行った。その結果、E2は閉経後年数や年齢、各施設の測定性能や基準範囲の差異を考慮したうえで選択基準として用いる必要があることが示唆された。現在、妊孕性の有無を判断する確実な客観的指標はなく、適切な選択基準の確立には更なる検討が必要である。