【目的】2017年、フィブラート系薬剤であるpemafibrateの製造販売が承認された。第三相試験において、fenofibrateとの比較が行われ、約500分の1の投与量で同等の有効性が得られること、この投与量で副作用の発現率が数%であることが示された。しかしながら、フィブラート系薬剤の添付文書に共通して、腎機能に異常が認められる患者にHMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン系薬剤)と併用する場合、急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症があらわれやすい旨、注意喚起されている。そこで本研究では、約20年前、米国にて、cerivastatinとの併用により多くの死亡例が報告されたgemfibrozil、及びfenofibrateを対照として取り上げ、pemafibrateとの違いを基礎的に検討した。
【方法】2004~2016年の大規模有害事象自発報告データベース(FAERS)にある約887万件の報告を解析した。一方、Wistar系雄性ラットを用い、gemfibrozil群、cerivastatin群、gemfibrozil+cerivastatin群、さらに、fenofibrate群、pravastatin群、fenofibrate+pravastatin群、加えて、pemafibrate群、pemafibrate+cerivastatin群に分け、臨床用量にて単回投与した後の臨床検査値を評価した。また、gemfibrozil、fenofibrate、pemafibrateの筋肉組織中濃度をLC-MS/MSで評価した。
【結果・考察】FAERS 解析の結果、gemfibrozil投与に伴う急性腎不全、横紋筋融解症の発症が示唆され、さらに、cerivastatin併用によるリスク増大が示唆された。ただし、これら以外のフィブラート系薬剤、スタチン系薬剤では、併用によるリスク増大はほとんど認められなかった。一方、ラットでは、gemfibrozilの投与に伴う筋肉系障害に関する検査値の上昇が示唆されたが、cerivastatin併用による更なる上昇は認められなかった。Fenofibrateとpravastatinの組み合わせでも、pemafibrateとcerivastatinの組み合わせでも同様に、スタチン系薬剤の併用により、検査値が更に上昇することはなかった。なお、gemfibrozilの投与8時間後の筋肉組織中濃度は0.09±0.03μg/g(±SD)であり、cerivastatinの併用により0.21±0.08μg/g(p<0.01)へ上昇することが示された。これに対し、fenofibrateの筋肉組織中濃度はpravastatinの併用で変化しなかった。また、pemafibrateの濃度は定量下限未満であった。
【結論】フィブラート系薬剤の適正使用に必要な情報の収集に向けて、基礎的な検討を継続することが必要と考えられた。