【目的】メトトレキサート(MTX)による間質性肺疾患(ILD)、肝毒性、骨髄抑制、感染症などの副作用・有害事象の予防や管理は、MTX療法の基本である。多様な併用療法が行われる中、治療パターン毎の有害事象の実態を把握することは安全性確保に有益である。本研究では、大規模自発報告有害事象データベースであるFDA Adverse Event Reporting System(FAERS)を用いて、MTXに関連する有害事象報告に対して併用薬が及ぼす影響を解析した。
【方法】1997年から2019年のFAERS(JAPIC AERS)を用いて、全報告例を対象にした不均衡解析により、MTX使用および関節リウマチ(RA)治療に用いられる併用薬の使用時のILD、肝毒性、骨髄抑制、結核の粗報告オッズ比(cROR)を集計した。次に、RA症例を対象に、多重ロジスティック解析を実施し、MTX治療パターン毎(MTX単独、FA、およびTNF阻害薬(TNFi)との併用)に各有害事象の調整オッズ比(aROR)を算出した。
【結果・考察】MTX使用に関連するILD、肝毒性、骨髄抑制、及び結核のcROR(95%信頼区間)は、それぞれ4.00(3.83-4.17)、1.99(1.96-2.02)、3.66(3.58-3.74)、及び7.97(7.65-8.3)であった。MTXにFAまたはいずれかのTNFiが併用されると、これら有害事象のcRORの多くは有意に低値を示す傾向であった。RA症例を対象とした多重ロジスティック解析により、年齢、性別、およびMTXの治療パターンを説明変数とした際のaRORを算出した。高年齢と男性がこれらの有害事象と関連し、FAがMTX、またはMTX+TNFi療法に併用されると、MTX関連有害事象のaRORは減少する傾向であった。 一方、MTXとTNFiの併用では、結核のaRORは高値を示した。
【結論】自発的報告システムの研究には報告バイアスなどの限界があるものの、aRORを指標とした本検討では、FAの併用により一部のMTX有害事象のオッズ比が低値を示し、MTX治療におけるFAの副作用低減に関する臨床的なエビデンスが反映されていた。FAERSが治療パターン毎の有害事象の比較に有用である可能性が示された。