【目的】抗体医薬品の投与はInfusion Related Reaction (IRR) を発現するリスクを有している。アテゾリズマブ (Atezo) の投与によるIRRの発現率は添付文書において2.6%とわずかではあるが、大阪大学医学部附属病院 (当院) における後方視的調査において、投与中から投与後早期において副作用を訴える症例が少なからず存在することが明らかとなった。本研究ではAtezoの投与により早期に発現した副作用および関連するリスク因子の調査を行った。【方法】当院において2018年8月~2021年9月にAtezoを初回投与された71例を対象とし、診療録より後方視的に、投与中または投与開始後24時間以内に発現した有害事象のうち、Atezoの投与と因果関係が否定できない事象を早期の副作用として収集した。解析にはWilcoxonの順位和検定、Fisherの正確検定を用い、有意水準は0.05とした。本研究は当院の倫理審査委員会の承認のもと行った。【結果・考察】Atezoの投与により15/71例 (21.1%) が早期に副作用と考えられる症状を訴えた。呼吸器内科42例を対象としたところ、12/42例 (28.6%) で早期の副作用が発現し、Wilcoxonの順位和検定でBMI低値と有意な関連が認められた。また、Atezo単独レジメン4/20例 (20.0%), 化学療法併用レジメン8/22例 (36.4%) で早期の副作用が発現し、化学療法併用レジメンにおいて、BMI低値と有意な関連が認められた。本研究における早期の副作用発現率は早期に発現した有害事象を全て集計したため、添付文書におけるIRRと定義された発現率より高い傾向が認められた。化学療法併用レジメン投与患者はAtezo単独投与患者より副作用の発現率が高く、化学療法の併用が一因であると考えられるが、Atezo単独投与症例においても添付文書の報告より高い副作用の発現率が認められており、副作用が発現したタイミングなどを考慮した解析が必要と考えている。また、BMIがICI治療における臨床転帰やirAEの発現の指標として注目されているが、本研究においてBMIと早期に発現する副作用との関連が確認された。IRRを含めた早期の副作用発現の指標としてもBMIが有用である可能性が見出され、BMIによる免疫反応性の違いなどによるIRR発現の影響について検証を進めていく予定である。【結論】Atezoの投与における早期の副作用の発現率は20%以上と高く、またBMIとの関連が認められ、ICIによるIRRの予測にBMIが指標となる可能性が示唆された。