【目的】パルボシクリブはサイクリン依存性キナーゼ4および6を特異的に阻害する経口分子標的薬であり、ホルモン受容体陽性/ヒト上皮増殖因子受容体2陰性の進行・再発乳がん患者に使用されている。パルボシクリブは1日1回125mgを3週間連続して内服し、その後1週間休薬する。有害事象の発生状況によっては1日1回100mgや75mgへ用量の調節を行うこととなっており、好中球減少をはじめ高頻度に有害事象が発生し、休薬や減量を余儀なくされる場合も多い。しかしながら、これまでパルボシクリブの用量調節と治療継続に関する報告はない。そこで本研究では、岡山大学病院においてパルボシクリブが投与された乳がん患者を対象として、パルボシクリブの用量調節と治療継続への影響について検討を行った。【方法】2018年1月から2022年6月までの期間に、岡山大学病院においてパルボシクリブが処方された乳がん患者38名を対象とした。調査項目は患者背景(年齢、身長、体重、体表面積)、投与量、投与期間、副作用歴、投与開始前の血液検査値、有害事象、投与中止理由とした。パルボシクリブを投与開始してから中止するまでの日数はKaplan-Meier法を用いて、log-rank testを行った。【結果・考察】対象患者38名のうちパルボシクリブ125mgで継続した患者は12名、125mg投与後に減量した患者は26名であった。治療期間の中央値は、125mg継続群で212日(35-791日)、減量群で502日(77-1733日)であり、減量群において有意に治療期間の延長がみられた(p=0.00248)。投与中止の原因として、減量群のうちパルボシクリブ服用継続中の患者を除き15名中12名がprogressive disease (PD)であった。パルボシクリブは125mgから投与開始しするが、Grade 3の有害事象が出現する場合は、休薬し、回復後は同一投与量で投与を再開する。しかし、回復に日数を要するなどの場合は減量を考慮することとなっている。今回、パルボシクリブの投与量を125mgで継続するよりも、減量した患者の方が服用継続日数が高かった。また投与中止した原因の多くがPDであった。本調査は、症例数が40例未満であり、今後症例数を増やしたさらなる検討が必要である。【結論】パルボシクリブは投与量を125mgで継続するよりも、有害事象の発生に応じた適切な用量調節を行うことで治療期間が継続する可能性がある。