【目的】エダラボンは筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療に静注製剤として用いられている.反復静脈内投与による患者・医療従事者・介護者の負担を軽減するためエダラボンの経口懸濁液が開発されており,経口懸濁液では静注製剤と血漿中曝露が同程度であることが確認されている.経口投与では薬物動態に対する食事の影響の評価が必要であるため,本研究では,経口投与後のエダラボンの薬物動態に及ぼす食事の影響を評価し,食事の影響を回避する投与方法を検討した.
【方法】3つの第1相臨床試験において,エダラボン経口懸濁液の単回投与後の薬物動態に対する食事の影響を評価した.3試験のいずれにおいても,被験者は様々な食事条件でエダラボンの単回投与を受けた.20歳以上45歳以下の日本人健康成人男性(試験1,2及び3)又は女性(試験3)を対象とした.
【結果・考察】試験1では,6例が登録され,5例が試験を完了した.試験2及び3ではそれぞれ9例及び16例が投与を受け,全例が試験を完了した.最高血漿中濃度(Cmax)及び最終相を外挿した0時間から無限大時間までの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-∞)は,空腹時投与と比較して高脂肪食摂取30分後の投与で低値を示した(試験1).高脂肪食摂取4時間後(試験2)又は低脂肪食摂取2時間後(試験3)に投与したとき,血漿中エダラボン濃度の低下(投与後約1時間以内)とそれに伴うCmax及びAUC0-∞の低下が認められた.高脂肪食摂取8時間後,低脂肪食摂取4時間後及び軽食(ALS患者でよく服用される栄養補助剤)摂取2時間後に経口投与したとき,Cmax及びAUC0-∞は空腹時投与と概ね同様であり,食事の影響を受けなかった.高脂肪食摂取の1時間前にエダラボンを投与しても,空腹時投与と比較してCmax及びAUC0-∞に影響は認められなかった.エダラボンの代謝物である硫酸抱合体及びグルクロン酸抱合体は,エダラボンに比べてCmax及びAUC0-∞の食事による変化の程度が小さかった.エダラボンを食後又は空腹時に投与したとき,尿中の薬物動態プロファイルは類似していた.
【結論】食事と共にエダラボンを経口投与すると,エダラボンの血漿濃度が低下し,食事の影響を受けることが明らかとなった.高脂肪食摂取8時間後,低脂肪食摂取4時間後,軽食摂取2時間後及び高脂肪食摂取1時間前にエダラボンを経口投与した結果,空腹時投与と比較して,エダラボン及び代謝物の薬物動態に食事の影響は認められなかった.