【目的】エダラボン静注製剤は筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療として使用されているが,静注は負担が大きいため,エダラボン経口製剤が開発されている.エダラボンの経口投与では吸収過程を含み追加のDDI評価が必要となるため,in vitro DDI試験成績および経口投与で必要となった臨床DDI試験の結果を報告する.
【方法】In vitro DDI試験を実施し,エダラボン及びその代謝物のCYP450に対する阻害・誘導作用,UGT及びトランスポーターに対する阻害作用を検討し,経口投与後のDDIのリスクを評価した.臨床DDI試験では,本剤120 mgを5又は8日間反復投与したときの各基質の薬物動態(PK)へ与える影響を非盲検化で評価した.
【結果・考察】エダラボンはCYP1A2に対し誘導効果を示したが,in vitro‐in vivoスケーリングファクターを考慮すると,臨床でのDDIリスクは低いと予測された.エダラボンはCYP3A4及びCYP2B6に対して弱い誘導作用が高濃度(100 μmol/L)においてのみ認められ,臨床でのDDIリスクは低いと予測された.しかし小腸に発現しているCYP3A4への誘導作用に関して,in vitro試験では経口投与後の腸管での高濃度に相当する評価は実施できず,臨床DDI試験における検討が必要であった.エダラボンはCYP2C9に対して阻害作用を示したが,臨床用量でのCmaxとIC50値の比較から,臨床におけるDDIリスクは低いと考えられた.エダラボンがBCRPに対して,代謝物硫酸抱合体がOAT3に対して阻害作用を示し,腸管濃度とIC50値の比較から,臨床DDI試験での評価が必要と考えられた.
In vitro試験より必要と考えられたエダラボン又は硫酸抱合体の臨床でのDDI評価として,臨床DDI試験においてシルデナフィル(CYP3A4基質),ロスバスタチン(BCRP基質)及びフロセミド(OAT3基質)のPKに対する影響を評価した.単独又はエダラボン併用下でのCmax及びAUC0-∞の最小二乗平均比の90%信頼区間は,同等性の閾値(0.80-1.25)の範囲内であり,エダラボンは検討した各基質のPKに有意な影響を及ぼさなかった.
【結論】In vitro及び臨床DDI試験により,エダラボン及びその代謝物は臨床用量でCYP450,UGT及びトランスポーターを阻害せず,CYP450を誘導しないことが明らかとなり,エダラボン経口投与によるDDIリスクがないことが示された.