【目的】Model-based meta-analysis(MBMA)は公開されている臨床試験データの要約値を抽出し、数理モデルを構築するメタ解析手法である。モデルを用いることで薬効の経時変化や薬剤の用量-反応関係の定量化を行うことができる。さらに直接比較試験が行われていない場合においても、試験同士の間接的な比較が可能となる。原発開放隅角緑内障(POAG)は、眼圧上昇により視神経障害を引き起こす疾患である。治療の中心は薬物治療であり、第一選択薬はプロスタグランジン関連薬(PGA)である。状況に応じて点眼薬の変更または併用を検討するが、第2選択薬どうしを直接比較した試験が少なく、コンセンサスは十分には確立されていない。それで本研究では、POAGに対する第2選択薬の有効性をMBMAにより定量化することで、同領域の治療薬の選択に関して有用な情報を提供することを目的とした。
【方法】複数のデータベース(MEDLINE、CENTRAL、ClinicalTrails.gov)を系統的に調査した。選択基準に基づき文献の適格性を評価したのち、患者背景、試験デザイン、使用薬剤、各時点における眼圧(IOP)についてのデータを文献より抽出した。収集したデータより、4つの薬剤クラス(炭酸脱水酵素阻害薬、α刺激薬、Rhoキナーゼ(ROCK)阻害薬、β遮断薬)に関して、単剤投与およびPGAとの併用を含む2剤併用におけるIOPの経時変化を表現するモデルの構築を行った。経時変化を表現するモデルとして、EmaxモデルとExponentialモデルを候補とした。その後、構築したモデルに基づき、薬剤投与後28日間におけるIOP変化率の経時推移をシミュレーションした。解析にはNONMEM 7.4.3、R 3.6.3を用いた。
【結果・考察】文献探索の結果、321試験、810群が解析対象となった。各薬剤クラスおよび2剤併用時におけるIOPの経時変化はExponentialモデルにより表現された。各薬剤のIOPの改善率をシミュレーションにより評価した結果、第2選択薬の単剤療法の中ではROCK阻害薬が最も高い有効性を示し、2剤併用時には、ROCK阻害薬とPGAおよびβ遮断薬とPGAの組み合わせが高い有効性を示した。
【結論】POAGの第2選択薬を対象にIOP変化の経時推移を表現するモデルをMBMAの手法により構築した。本研究で構築したモデルは、POAG治療における薬剤選択に寄与すると考えられる。