【目的】関節リウマチ等の治療に用いられるインフリキシマブ(INF)は,血中トラフ濃度と有効性の相関から,関節リウマチの治療に用いる場合は少なくともINF血中トラフ濃度を1μg/mL以上に維持することが推奨され,薬物モニタリングのための体外診断用キットが承認されている.当該キットは,血中濃度が1μg/mL以上か未満かを判定し,INFの増量や他剤への変更の必要性を判断するための補助に使用されている.INFのバイオ後続品として5製品が承認されているが,先行品とバイオ後続品(BS)では免疫化学的性質が異なる可能性があるため,当該キットにおける反応性に相違が生じる可能性がある.そこで本研究では,先行品とBS 5製剤について,当該キットの反応性を比較した.【方法】INF先行品およびBS 5製剤を添付文書に従って溶解し,ヒトプール血清で0.3, 0.7, 1.0, 1.3, 2.0 μg/mLとなるよう希釈し測定試料とした.キットの測定部に測定試料とカットオフコントロールをそれぞれ120 μL滴下し,判定部のラインの発色度がカットオフコントロールと同等以上に強い場合は1 μg/mL以上,(+)陽性と判定した.なお,判定は,3人以上で独立して行った.【結果・考察】カットオフコントロールの発色度と検体の発色度を目視で判定するという測定原理から,分析者による判定結果の違いが認められた.特に1.0 μg/mLでは(+)と判定されないケースがあり,確実に(+)と判定できるのは2.0 μg/mLの試料であった.先行品とBS 5製剤の比較においては,反応性に大きな違いは観察されなかったが,BS 1製剤では1.0 μg/mLでもほぼ(+)と判定される現象が認められた.この製剤のみ添加物が異なるため,添加物の影響を評価したが,顕著な違いは観察されなかった.さらに免疫化学的性質の差異を,当該キットとは異なる評価系で比較するため,3種類のインフリキシマブ測定用ELISAキットにおける反応性も比較したところ,先行品とBS 5製剤において明確な違いは認められなかった.【結論】今回の検討において,インフリキシマブの先行品とBS 5製品の間で,当該キットの反応性に大きな違いは認められなかった.ただし,1.0 μg/mL付近の薬物濃度では,分析者によって判定結果が異なる可能性のあることに留意する必要がある.