進行性・転移性膵がんの全身化学療法には、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法(GnP)及びmodified FOLFIRINOX療法(mFFX)に加え、S-1療法及びゲムシタビン単剤療法など幾つかの治療選択肢が存在するものの、進行性・転移性膵がんにおける治療の主たる目的が延命及びQOLの延長であること、化学療法レジメンによって治療効果と忍容性のバランスが異なることから、実施する治療は患者の病態や治療方針のニーズ等に応じて選択されるため、どの化学療法レジメンを第一選択すべきか明確ではない。そこで本研究では、医療提供者の視点で有効性及び安全性に加えて経済性を考慮して化学療法レジメンを選択するための費用対効果分析を実施した。臨床試験データを包括的に統合した分析(医師グループ)と国内病院のカルテデータ用いた分析(薬剤師グループ)を行うことで、臨床試験とリアルワールドの違いによる費用対効果への影響についても検討した。具体的には、医師グループと共同で、(1)日本で使用される一次化学療法レジメンについて文献調査とネットワークメタアナリシスによる相対的な有効性比較、(2)病態変化や副作用発現時のQOL値を調査するために、疾患状態のシナリオ作成とシナリオによる一般人及び医療従事者へのQOL調査を行った。また、薬剤師グループと共同で、(3)臨床試験データの少ないmFFX及びGnPによる一次化学療法を行った転移性膵がんのカルテ調査を行い、治療実態(有効性、医療資源消費)や副作用発現について患者個別データの収集を行った。(1)~(3)のデータをまとめて、3つの健康状態(無増悪生存、進行、または死亡)及び2次治療を考慮した分割生存時間モデルを使用して、進行性・転移性膵がんの化学療法の有効性、安全性、経済性について、臨床試験及びリアルワールドの双方で評価を行った。医師・薬剤師との共同プロジェクトの進め方も含めて、その結果について報告したい。