近年、治療中のがん患者に生じる有害事象のうち、特に痛み、倦怠感、不眠、不安など情緒的要因が強く影響する症状では、医療者と患者との間で認識に乖離があることが示唆されており、医療者の客観的評価だけでは患者を過小評価する傾向にあることが広く知られている。そのため、客観的評価に加え、患者の主観的症状評価の重要性が高まっている。さらに、ICTの急速な進化と普及により、国民の6割以上がスマートフォンやタブレット端末などを持つ時代となり、我々のライフスタイルやワークスタイルの様々な場面で大きな変化をもたらしている。この身近に汎用される電子末端を医療で応用する機運が高まっており、これらを用いて患者の健康状態を記録し、医療者がデータ収集できるシステム、いわゆるElectronic Patient Reported Outcome(ePRO)が期待されている。私もがんサバイバーとして、治療により生じた症状や病識について医療者との差を患者として感じていた一人である。他方、臨床薬剤師として、また研究者として目の前の患者症状を評価する立場になると、患者の本質的な症状を評価することが極めて難しいことも経験している。そのギャップを埋める一助となるePROの必要性は今後ますます高まり、技術面でもさらに進化していくことが期待される。今回のシンポジウムでは、このePROの臨床応用の可能性について、現在、臨床研究を実施しているがんサバイバーの薬剤師としての立場で私見を述べたい。