腫瘍や血液検体を用いた、いわゆる「がん遺伝子パネル検査」が保険承認され、がんゲノム医療が一般臨床として行われるようになった。まだ解決すべき問題点が多く、ゲノム拠点、中核、連携など、特定の施設に限られるが、研究レベルのゲノム診断が、一般診療に導入されたことには間違いない。ゲノムの異常には、遺伝子多型(SNPs)、遺伝子変異、遺伝子増幅、転座・欠失など、さまざまある。ゲノム異常が、特定の酵素やタンパク質の薬効薬理に大きく影響することの少なくない。私は、がん領域において、薬物療法の効果を予測するバイオマーカーの研究に従事してきた。その中で、特定の遺伝子多型(SNPs)(FcγR, CYP2D6など)や、体細胞性変異(EGFR変異、AKT変異)、生殖細胞系列変異(gBRCA)により、抗悪性腫瘍薬の薬効が大きく変わることを、前向き臨床研究の中で検証してきた。又、現在、保険償還されている、OncoGuideTMNCC-オンコパネルシステム検査の開発と臨床研究に、開発早期から関わってきた。本シンポジウムでは、それらの経験を通じて、ゲノム異常が薬効に影響を及ぼすことをいかに研究するか、又、臨床試験を通じていかにエビデンスにするか、又、それを一般病院にいたるまで、いかに一般医療に実装化させていくのかについて、議論をしたい。