希少がんの患者数は、全がんの15%から20%を占めていると言われている。しかし、製薬企業にとり、個々の希少がんは、患者数が少ないために被験者を集めにくい、市場規模も小さく、経済的なインセンティブも十分でないなど、さまざまな要因から、薬剤開発が遅れてきた。しかし、ゲノム医療の到来とともに、メジャーながんと同じ遺伝子変異が希少がん患者にみつかれば、分子標的薬の使用になる可能性がでてきた。RCJでは患者会11団体に対してアンメットメディカルニーズ(UMN)調査を2018年に行った。そのとき、自分が参加できる治験があれば参加したいと回答した方が50%以上であった。いかに新薬の到来を心待ちにしている患者・家族が希少がんの領域では多いいかを知った。さらに、DCTの登場により、治験への参加を切望する希少がん患者にとり、治験がより身近なものとなる可能性もでてきた。これは朗報である。 また、希少がんの医療に関するさまざまな課題があることもUMN調査でわかった。希少がんを治療できる専門医が少ないこと、遠くまでいかないと希少がんの専門医による医療が受けられないことなど、これは大都市圏に住居を構えていない患者にとっては大変な負担になることが分った。RCJでは、患者の新薬への期待に応えるべく、希少がんの研究からTR、治験へのプロセスを支援するために国立がん研究センター中央病院で進むマスターキープロジェクト(MKP)と2018年に提携した。2018年当時のMKP研究の登録者数は250名程度であったが、我々が参加することでその後順調に進展し、現段階では2500症例を超えるところまできた。また、MKPの医師主導型治験は14本,企業治験は10本と合計24本の治験が行われるようになってきた。RCJではこれらの展開をさらに支援するために、希少がん患者の治験への参加を促すプロモーションを企画している。このようなPRを通して、希少がん患者とその家族が少しでも臨床試験・治験について知ることになればと期待している。 希少がん医療に関連するのさまざまな課題について述べてきたが、これからDCTが国内で進展することになれば、地方に住む希少がんの患者やご家族にとり、国内治験への参加がしやすい環境となること、さらに国際共同治験への参加も可能性が広がることなどが期待できる。RCJは希少がん患者会としてマルチステークホルダーとともにDCT活動に参加し、DCTの発展に貢献したい。