【背景】高齢化、マルチモビディティ(複数疾患併存)状況が進む現在、適正処方の推進は重要な課題である。高齢化の進む地域市町村の中核的病院である当院におけるポリファーマシーの現状を、大腿骨骨折症例および腎不全患者にて調査した。
【大腿骨骨折症例】大腿骨近位部骨折患者100名[年齢:86.0±6.9(平均±SD)歳、男/女:15/85名、BMI:20.2±3.4]で、服用薬剤(種類)数は平均6.1剤(6剤以上は54名)であった。合併症別では、統合失調症(3名)平均12.3剤、透析患者(7名)9.4剤、心不全・心房細動(16名)8.4剤、糖尿病(22名)8.3剤、パーキンソン病(7名)8剤などであった。中枢神経系薬(認知症治療薬を除く)は39名(ベンゾ系睡眠薬は18名)で、骨粗鬆症治療薬は21名で処方されていた。
【保存期慢性腎不全症例】eGFRが30ml/min/1.72m2未満の患者166名[年齢78.8±11.0歳、男/女:85/81名、原疾患は腎硬化症73名(44.0%)、糖尿病58名(34.9%)、糸球体腎炎8名(4.8%)など]で、処方薬剤数は7.9±3.8剤[6剤以上は125名(75.3%)]であった。降圧薬は84.9%に処方され、以下胃腸系薬53.0%、尿酸低下薬50.0%、利尿薬48.2%などであり、糖尿病患者は非糖尿病より処方薬剤数は有意に多かった(9.6±3.3 vs 6.9±3.4)が、年齢における有意差はなかった。腎機能障害時に注意すべき薬剤は多く、本調査では特に問題となる処方はみられなかったものの、医師・薬剤師間のチーム医療の構築などの対策が重要である。
【透析症例】血液透析患者203名[年齢68.8±11.6歳、男/女:118/75名]で、処方薬剤数は9.1±2.9剤(種類)[6剤以上は181名(89.2%)]で、総薬剤数は16.9±7.1剤であった。降圧薬、胃薬、リン吸着薬は8割以上の患者で処方され、薬剤数はリン吸着薬が約4割を占めた。処方薬の再検討では、約6割の患者で平均1.4種類、3.1剤の減量が可能と考えられた。服薬アドヒアランスは概ね良好だったが、外食時には約4割でリン吸着薬の服用忘れがあり、血清リン高値、リン吸着薬多数と関連した。
【総括】マルチモビディティとポリファーマシーの関連が認められた。適正な処方のために、服薬アドヒアランス、認知症患者の服薬管理、シックデイの対応などの問題の含め、多職種のスタッフが丁寧に関わって解決していく必要があると思われる。