大学病院の中核機能である診療、教育、研究の組織運営において、データの利活用は今や不可欠である。経験に基づく判断に代わって、あるいは付加的にデータを利用することより客観性を確保することで、持続的に合理的な意思決定を実現することが期待される。また、対外的に組織運営の透明化を図り、社会への説明責任を果たすためにも、体制や実績は測定され、公表されることがある。加えて、この取組み自体が組織の活性化を促進するといった副次的な効果も期待されている。こうした目的で測定し、データにより機能を評価する際、標準化された測定基準を設けて施設間ベンチマークを行うことは、自施設の中長期計画の評価および同じミッションを担う他施設との比較を通じた評価基準の設定を可能にする。このように、データを参照する手続きを組織運営プロセスに組み込むことへの意義が広く認識され、関心が高まっている。
 一方、評価に有用な測定とベンチマークを実施するにあたっては、さまざまな点に注意が必要である。特に、ベンチマークが役割を果たすためには、測定される機能に関わる専門家が測定の価値について合意することが重要である。測定による定量化の観点としては、何を測るか、いかに測るか、どのような側面を測るか、測定の前提はなにか、測定結果はいかに解釈しうるかなどが該当する。次に、ベンチマークにおける測定結果の共有方法についても合意形成が望ましい。施設名も含めた結果の共有は、測定対象に関連する因子を含めた解釈が可能となる利点があるが、非難や誹謗につながりかねないというリスクを伴う場合がある。また、測定結果の可視化は、効率的な評価の実施に有用である。多岐にわたる測定結果の評価に要する労力を軽減することは、迅速な意思決定の一助となりうる。ただし、ベンチマークにおける可視化のデザインにおいて、比較の適切性が担保されていなければ、評価を誤る恐れがある。
 当演題では、演者が全国の国立大学病院におけるベンチマークの実践を支援する中で得た知見について触れながら、パフォーマンス調査とその意義に関する概要を述べる。