国立大学病院の社会的使命は、我が国の医療の充実・発展に寄与することである。国立大学病院長会議では、あるべき将来像としてグランドデザインを策定し、行動規範となる提言を公表している。また、国立大学病院データベースセンターでは、年に1回、国立大学病院のパフォーマンス調査を実施しており、臨床研究も調査対象となっている。一方、臨床研究を取り巻く環境は、国際共同治験や医師主導治験の増加、医療法における臨床研究中核病院の認定開始、臨床研究法や人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の施行等、大きく変化している。国立大学病院として時代に合わせた使命を果たすべく、臨床研究活動を維持・向上させることを目的に、現状のパフォーマンスを適切に評価することが重要である。
そこで、国立大学病院の臨床研究パフォーマンスを適切に評価・分析しうる評価指標と調査項目を検討する必要がある。研究活動の評価指標を分類し、各評価指標の調査項目は、臨床研究に関連する活動を反映し、中長期的に経年評価するための項目と、臨床研究環境の変化に応じた新たな項目で構成することとした。
パフォーマンス調査は、次の4つの評価指標と調査項目(括弧内)で構成し、新規調査項目として、臨床研究法を遵守して行う研究数、倫理審査の中央一括化に伴う審査研究数、臨床研究専門職の構成や、研究成果等を追加した。
1.臨床研究の活性度(各臨床研究区分の研究数)
2.国内の臨床研究の倫理性と透明性確保への貢献度(倫理審査を行う委員会における審査件数)
3.研究支援体制の充実度(臨床研究の専門職スタッフ数と支援実績)
4.医療への貢献度(実用化に結び付いた研究実績)
国立大学病院長会議が策定する行動計画のもと、研究活動をパフォーマンス調査で適切に評価・分析することにより、改善策を講ずるPDCAサイクルをうまく回し、各大学病院および国立大学病院全体の研究の活性化とその成果が医療への貢献につなげることを目指す。現状を適切に評価分析するためには、回答者に調査の意図や調査項目の定義を明確に示し、理解を得る必要がある。調査の認知や調査結果の周知につながるための活動についても紹介する。