国立大学病院臨床研究推進会議(以下、推進会議)は、全国国立大学病院42大学44病院で構成され、2012年10月に設立し2013年1月に第1回総会を開催した。同年6月には国立大学病院長会議(以下、病院長会議)の協議会として承認された。
 このような中、臨床研究における利益相反やデータ不正に係わる事件が相次いで報道され、アカデミアによる臨床研究に対する信頼を大きく揺るがす事態が生じた。その背景には、研究倫理だけでなく、信頼性確保と利益相反管理に関する基本的知識やルール、マナーの教育が不十分であったことや、支援組織の整備が不十分であったことがあると考えられた。各大学病院においては、これら一連の事件を当事者として深刻に受け止め、不正防止と信頼回復に向けて、教育、支援、監視・指導体制について至急点検し、対策を講じる必要があることから、2013年9月19日に病院長会議常置委員長と推進会議会長の連名で、「臨床研究の信頼性確保と利益相反の管理に対する緊急対策」が42国立大学に通知され、体制整備が促された。
 推進会議は、信頼性確保した支援、品質管理支援、利益相反の管理、教育・研修等の体制整備状況について、2013年~2016年の4カ年、フォローアップ調査を実施した。調査結果は毎年推進会議の総会時にフィードバックし、各大学の実施体制の改善、整備に役立てられ、年々レベルアップすることに繋がった。調査を実施しそれを活用することの意義が示されると共に、その後の臨床研究の活性化が期待されていた。
 しかしながら、2018年4月に臨床研究法が施行されてから後、臨床研究数は著しく低下し、また、新型コロナウイルス感染症に関連する臨床研究数は諸外国に水をあけられ、日本の科学研究の国際的地位低下が懸念される事態となっている。臨床研究の活性化に関する指標としては、国立大学病院データベースセンターが病院機能の向上を目的に実施しているパフォーマンスを評価するための指標調査(研究領域)を活用してきたが調査項目が十分ではなかった。2019年からは調査項目が見直され、研究パフォーマンスの評価指標として体系化された。本講演では、2019年から3年間の研究パフォーマンス調査の結果分析の実例を紹介すると共に、その活用について概説する。今後は、調査結果から課題を抽出し、効果的な改善策に繋げ、日本の臨床研究の活性化を図ることが期待されている。