COVID-19は新興感染症であり、出現当初は効果と安全性の示された治療薬がなかった。そこで各国で治療薬の探索のため数多くの臨床試験が行われた。そのなかで米国National Institute of Allergy and Infectious Diseases (NIAID)が行ったのがAdaptive COVID-19 Treatment Trial (ACTT)である。本試験はアダプティブデザインを用いたランダム化比較試験である。この枠組みを使い、まずはレムデシビルとプラセボとの比較試験が2020年2月21日より開始された。本試験には米国の医療機関のみならず欧州や東アジアの施設も参加した。日本からは国立国際医療研究センターが3月25日から参加した。患者の登録は速いスピードですすみ、同年4月29日には中間解析の結果が公表され、レムデシビルの有効性が示された。これを受けて日本ではレムデシビルが同年5月に特例承認を受けた。ACTTではACTT1-4の4つの研究が行われ、ほぼ1年の間にバリシチニブの有効性、バリシチニブとデキサメサゾンの同等性が示され、一方でインターフェロンβ1aの有効性は否定された。ACTTの枠組みは、有事に治療薬を迅速に発見することが可能であった。当日は本研究を例にCOVID-19のアダプティブデザインを用いた臨床試験について解説したい。