患者にとって,投与の簡便な経口剤は最も望まれるものである。Exposure-Concentration-Responseに則って臨床優位性を考えるのであれば消化管吸収を適切に評価することは薬物動態に携わる者として重要なポイントである。消化管吸収研究に用いられる実験手法も多くの手法が開発実装されている。消化管吸収の評価において最初に評価されるべきは腸管の透過性である。バイオバンクは一般には血液、腫瘍組織の保管がなされ、言い換えれば資料の収集、バンキングが容易な生体試料であることが多い。疫学調査や患者選択のためのバイオマーカー探索などバイオバンクの恩恵を受けられる一方で、採取方法・前処理法などに拘りのある試験を行う際には通常の倍バンクでは困難が生じる。そこで我々は「オンデマンド型バイオバンク」を利用してヒト正常小腸オルガノイドを樹立した。ヒト小腸オルガノイドの樹立には組織摘出から短時間での前処理開始とともに高い技術レベルが求められる。オルガノイド樹立成功率は大腸、小腸でそれぞれ100および50%であった。樹立された細胞株を用いた試験系では盃細胞の存在、ムチン層の確認ならびに細胞間バリア機能とともに小腸細胞の極性が維持されていた。さらに薬剤の膜透過性を評価するうえで重要なトランスポータおよび薬物代謝酵素の機能評価を実施し、試験系として使用可能であると考えられる結果が得られた。新モダリティーといったこれまでの経験則では予測性に課題を有する化合物に対する新規の評価系の意義と、ヒト予測の精緻化におけるin silico技術について紹介を行う。