【緒言】母乳は、哺乳動物であるヒトにおいては自然な栄養であるが、病的な状態にある新生児にとっては、どんな薬よりも貴重な治療手段となる。母乳バンクは、「ドナーミルク(寄付された母乳)」を低温殺菌処理・冷凍保管・医療機関に提供する施設である。母乳がたくさん出るお母さんから余った母乳を寄付していただき、早産・極低出生体重児が自分の母親から母乳を得られない場合に、NICUの要請に応じて、「ドナーミルク」として提供する。1909年に世界初の母乳バンクがウィーンで誕生して以来、現在、50か国750か所以上の母乳バンクがある。日本の母乳バンクは、一般財団法人日本財団母乳バンクと一般社団法人日本母乳バンク協会(日本橋母乳バンク)の2拠点のみである(2022年3月現在)。本年5月より、当科が一般財団法人日本財団母乳バンク(https://milkbank.or.jp/)のドナー登録可能施設として活動を開始した。
【目的】母乳バンクのドナー登録可能施設としての取り組みの実績をまとめ、ドナーミルクの安定供給のために必要な方策を検討する。
【方法】当科で対応したドナー登録希望者である母親の背景を記述的に分析する。
【結果】活動を開始した2022年5月より8月17日現在までのドナー登録希望者の受診は14名。年齢は30歳から36歳(中央値31歳)。居住地は、静岡市内が10名、焼津市・藤枝市・浜松市・御殿場市が各1名。第一子5名、第二子7名、第三子2名。13名が、乳汁分泌が良好であったところ、母乳バンクの存在を知り、役立ててほしいという思いからの応募で、1名は、自身の子が入院して治療のために絶食の状態であることから、他のお子さんに役立ててほしい、という理由であった。全員が、規定の問診(既往歴や服薬歴等)や血液検査(感染症スクリーニング)をクリアして、ドナーとして正式な登録に至っている。
【考察】母乳を必要とする赤ちゃんに役立ててほしい、役に立ちたい、という純粋な母親、家族の気持ちを受け止め、母乳バンクのシステムにつなげていくことが当科の役割である。遠方からでも時間を作って面談に訪れるドナー候補の母親に対して、余裕を持って丁寧にお話をして対応し、適切な知識や考え方を共有していくことが、協力者の輪を拡大し、母乳バンクを起点とした好循環を維持していくために不可欠である。
【結論】母乳バンクに協力する施設として、一人一人のドナー候補の母親に向き合っていくことが大切である。