【背景】2020年10月に日本で初となる血友病B(凝固第IX因子異常)の遺伝子治療の治験を行った。2022年8月に投与予定の遺伝子治療治験では、血友病とは異なる小児疾患を対象としており、遺伝子の投与パートのみを行う施設となっている。遺伝子治療は遺伝子組換えウイルス製剤を使用するため、カルタヘナ法に則って実施する必要がある。特に、ウイルスベクターを取り扱う期間および投与後間もない期間は、より配慮が必要となる。また、取り扱うウイルスベクターの種類や対象被験者の年齢によってもその対応は異なる。そのため、実施医療機関は医薬品治験とは異なる実施体制を構築する必要があった。【目的】当センターで実施した2つの遺伝子治療治験の実施を振り返り、医薬品治験との相違点を比較検討し、報告する。【方法】一般的な医薬品治験のモデルを設定し、準備の段階から、投与、その後の被験者対応に至るまでの相違点を検討する。その過程で求められている臨床研究コーディネーターの役割についても検討する。【結果・考察】2つの遺伝子治療治験では実施医療機関の体制に沿った実施手順を示す手順書を作成した。当センターには、遺伝子細胞治療等を専門的に取り扱う「遺伝子細胞治療推進センター(GCPセンター)」があり、主にカルタヘナ法に沿った体制整備に関する助言と手順書作成の協力を得た。医薬品治験との大きな相違点は、カルタヘナ法に沿った体制整備が必要なこと、ウイルスベクターを直接取り扱う調製・投与に係る業務は特に注意が必要であり、事前準備に多くの時間を費やしたこと、ウイルスベクター投与後は、被験者のウイルス排泄管理が必要なことであった。それらの点も手順書に定めることで、問題なく実施することができている。投与後の長期観察期間にて、一定のウイルス排泄管理期間を終了後は、通常の医薬品治験と同様の手順で実施可能であった。【結論】遺伝子治療治験の実施には、投与までの体制構築とそれに伴う設備や専門的な知識が必要であった。一方で、ウイルスベクターの種類が同じであれば、対応内容もほぼ同様である。新たな疾患領域の遺伝子治療を実施する際には、過去の事例を参照することは大いに有用である。今後は、より専門性を必要とする投与パートを受託する「Dosing施設」としても遺伝子治療治験の貢献できるように実施体制を整備する。