【目的】慢性血栓速先生肺高血圧症(CTEPH)の治療は、バルーン肺動脈形成術(BPA)と可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤やプロスタサイクリン受容体作動薬などの肺動脈血管拡張薬とのハイブリッド療法が主流となっている。BPA治療はCTEPH患者の肺動脈の血行動態を改善させ、肺動脈血管拡張薬強度を低下させる可能性があるが、BPA治療後のCTEPH患者の肺動脈血管拡張薬の服薬量調整についてのコンセンサスは得られていない。我々はBPA治療前後の可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤であるリオシグアトの薬物動態の変化を検討した。【方法】リオシグアト服用中のCTEPH患者4名を対象に、BPA治療前とBPA治療終了3ヶ月後のmPAP、NT-proBNP測定、並びに6点(リオシグアト服用前、1回量服用後0.5、1、2、3、5時間)の静脈採血を施行した。LC/MS/MS法によりリオシグアトの血中濃度を測定しAUC0-5hを算出した。【結果】症例1は46歳男性、リオシグアト服薬量3.0mg/day、症例2は71歳女性、リオシグアト7.5mg/day、症例3は49歳女性、リオシグアト3.0mg/day、症例4は64歳女性、リオシグアト3.0mg/day、全症例でWHO肺高血圧症機能分類IIであった。BPA治療3ヶ月後、全症例でmPAPとNT-proBNPの低下を認め、WHO肺高血圧症機能分類Iへ改善した。BPA治療前後のリオシグアトAUC0-5hは症例1で、203.4→190.3ng・h/mL、症例2は709.5→1790.6ng・h/mL、症例3は249.1→334.9ng・h/mL、症例4は397.5→611.5ng・h/mL、に変化した。【結論】全症例において、BPA治療後3ヶ月のmPAPは25 mmHg以下まで低下した。また4症例中3症例においてBPA治療後のリオシグアトAUC0-5hはBPA治療前と比較して高値であった。