【目的】関節リウマチ(RA)治療において、メトトレキサート(MTX)は第一選択薬として用いられ、アンカードラッグとされている。一方、MTXで効果不十分な患者に対しては、治療効果を高める目的から生物学的製剤(bDMARDs)またはJAK阻害薬(JAKi)のMTX併用療法が診療ガイドラインで推奨されているが、併用投与時の安全性についての評価は少ない。そこで、本研究は複数の臨床試験データを用い、有効性と安全性に関してbDMARDs/JAKi・MTX併用療法とMTX単剤療法を比較することを目的とした。
【方法】医薬品医療機器総合機構が公表している申請資料概要及び審査報告書、PubMed、医中誌をデータソースとし、MTXで効果不十分な日本人RA患者を対象としたbDMARDs/JAKi・MTX介入のMTX対照無作為化比較試験を抽出した。有効性に関する評価項目は米国リウマチ学会(ACR)が作成した臨床試験結果の評価基準であるACR20%改善率とし、安全性に関する評価項目は感染症発症頻度とした。各評価項目について臨床試験データを抽出し、bDMARDs・MTX併用群対MTX単独使用群の相対リスク比(RR)及びJAKi・MTX併用群対MTX単独使用群のRRを算出した。また、bDMARDsをTNF阻害薬、IL-6阻害薬、T細胞選択的共刺激調節剤の作用機序で分類したサブグループにおいても同様に解析を実施した。解析にはReview Manager5.4.1を使用した。
【結果・考察】本研究では10試験が採用され、うちbDMARDs・MTX併用群は6試験、JAKi・MTX併用群は5試験であった。有効性の指標であるACR20%改善率では、bDMARDs・MTX併用群、JAKi・MTX併用群はいずれもMTX単独使用群に対して有意な優越性を示した(bDMARDs; RR 2.38, 95%CI 1.98-2.85、JAKi; RR 2.65, 95%CI 1.91-3.68)。安全性の指標とした感染症発症頻度では、bDMARDs・MTX併用群及びJAKi・MTX併用群とMTX単独使用群との間で有意な差は見られなかった(bDMARDs; RR 1.18, 95%CI 0.97-1.43、JAKi; RR 1.27, 95%CI 0.92-1.74)。また、bDMARDsの作用機序別の解析においても、併用群はMTX単独使用群に対して高い有効性を示し、安全性に有意差は見られなかった。
【結論】bDMARDs/JAKi・MTX併用群はMTX単独使用群と比較して高い有効性が確認でき、また安全性について有意な差は見られなかったことから、bDMARDs/JAKi・MTX併用療法は有用な治療法であると考えられる。