(はじめに)発達障害ではてんかんの併存率が高く、発達障害にてんかんが併存する場合の抗てんかん薬投与の選択は、併存する精神・神経症状を考慮した薬剤選択が必要である。ペランパネル(PER)は、既存の薬剤とは異なる新しい作用機序を有した薬剤である。(目的)発達障害併存てんかん患者における、PER投与による発作抑制効果と有害事象について検討した。(対象と方法)当院てんかん外来を受診した(2016年5月-2022年3月)てんかん患者で発達障害を併存しPERを投与している患者を対象にした。PER投与により、てんかん発作消失とてんかん発作頻度50%以上減少をPER治療効果ありと判断した。てんかん発作頻度25%以下の発作減少は変化なしと評価した。PER追加投与は、0.5mg/日より追加開始して4週間以上の間隔で増量を行った。本研究は当センター倫理委員会の承認を得て行った。(結果)PER使用症例数は106例であった。ASD患者におけるPER使用症例数は30例であった。PER投与におけるASD患者の割合は28.3%。性別は男女比22:8で、平均年齢は18.6歳(5-35歳)、罹病期間の平均は13.5年(1-35年)、併用抗てんかん薬剤数の平均は4.1剤(1-7剤)であった。PER投与により、発作完全抑制は5%、50%以上発作抑制した割合は62%で、67%で効果を認めた。効果なしは34%であった。そのうちASD併存てんかんにおける発作完全抑制は10%、50%以上発作抑制した割合は57%で、67%に効果を認めた。効果なしは30%で、有害事象は易興奮性26%(8例)、傾眠4%(2例)であった。ADHD併存てんかんにおける発作完全抑制は6%、50%以上発作抑制した割合は63%で、69%に効果を認めた。効果なしは31%であった。ASDとADHD併存てんかんにおける発作完全抑制は10%、50%以上発作抑制した割合は50%で、60%に効果を認めた。主なPER中止理由は、効果を認めないため、易興奮性、傾眠であった。(考察)PERの標的であるAMPA型グルタミン酸受容体は、早い興奮性神経伝達を担い脳活動の多くに関与している。一方で、過剰なグルタミン酸受容体の興奮は神経の過活動を引き起こし、正常な神経活動の破綻を伴う様々な症候をもたらす。発達障害を併存するてんかんの場合、PER追加投与は少量からの投与とし、1か月間隔以上の緩徐漸増投与が有効であった。