【背景】プロジェクト管理やデータマネジメント、モニタリング、統計解析、試験薬管理等、多岐に亘る専門職が臨床試験を支えている。本学では、臨床試験の専門職を育成するプログラムとして医学教育で用いられてきた経験学習の教育方略を用いて、2020年にそれぞれの専門職を対象とした教育研修用テキスト7冊を作成した。テキストは、方法論概略、コースの設定と具体的方法、教育方略と実際、評価とフィードバック、参考資料から構成されており、2021年以降はこれらを用いて新規入職者を対象に教育研修プログラムを実施してきた。
【目的】教育研修プログラム導入の成果を検証すること。
【方法】調査の方法は、専門職毎に研修受講者と研修指導者を対象としたアンケートをwebで実施する。調査項目は、研修受講者用として、目標の達成度や教育の方法論に則って受講できたか、学習や業務の達成度、研修内容の分かり易さ、研修指導者に対する評価、研修の定着度等、研修指導者用として、教育の方法論に則って指導できたか、研修内容の見直しの必要性、研修受講者への指導や評価の有無と達成度、通常業務との乖離が無いか等とした。アンケートの対象は研修受講者として入職1年目の職員、研修指導者として入職2年目以降の職員とした。
【結果】アンケート結果より、研修受講者は、専門職毎にテキストを活用した研修を受講できたこと、目標に対する達成度が高かったこと、教育の方法論に則った研修指導が受けられていた。一方で、これらは専門職間によってその程度に差が認められた。一方、研修指導者は、教育の方法論に則った研修指導を概ね行えていたものの、研修受講者へのフィードバックに差があり、研修指導者向けの教育や具体的な研修内容の一部見直しが必要であることが明らかとなった。
【考察】教育研修プログラム導入については一定の評価ができるが、テキストを用いた研修内容の改善や指導方法の教育により、より良い臨床研究専門職プログラムとなると考えられる。
【結論】臨床研究専門職を育成するための教育研修プログラムを導入したことによる成果は方法論に則った教育活動により専門業務の概要や役割を理解できた点であり、課題は研修内容の見直しやテキストで定められた指導方法を徹底することであった。本課題を解決することで、一層の業務の標準化や専門職間での連携強化の推進が期待される。