【目的】浜松医科大学臨床研究センターでは、特定臨床研究の質の向上を目的に研究立案から終了届の提出まで一貫した支援を行っている。特に新規申請時にQuality by designの視点で、プロジェクトマネージャー、教員とモニターによる研究計画書等の作成支援に注力している。今回、支援を受ける研究者の視点で我々の業務を見直すことを目的に、新規申請に至るまでの支援について研究者に満足度調査を行った。【方法】平成30年4月から令和4年6月までに当センターで支援を行った特定臨床研究21課題における、研究責任(代表)医師、研究計画書などを作成する実務担当者、研究責任医師以外の研究を統括する者の計31名を対象に、満足度調査を実施した。調査は総合的満足度と、それに影響を及ぼし得る支援担当者の接遇、支援時の提案事項の理解の容易さ、支援の迅速性、研究の科学的事項(研究の背景、目的、研究デザイン及び手順、選択除外基準、目標症例数、主要・副次評価項目、安全性評価項目、統計解析)に関する提案、および支援により科学的な質の向上が得られたかについて、5段階のリッカートスケール(1:低評価~5:高評価)で評価を依頼した。ポートフォリオ分析の手法を用いて、今後の支援で改善すべき点と維持すべき点を抽出した。また初回審査に必要な申請書類等の作成において支援が有意義と感じた項目についても調査した【結果・考察】アンケートは22人(71%)から回答が得られた。総合的満足度は平均4.8点であり、研究者から高い評価を得た。ポートフォリオ分析の結果、優先改善項目として統計学的解析方法に関する提案と初回審査までの時間の短縮が、改善項目として目標症例数の設定に関する提案が抽出された。重点維持項目として支援者の研究者への対応(接遇)、研究デザイン及び手順と安全性評価項目に関する提案が抽出された。申請書類の作成支援で有意義であったとの回答が多かった項目は研究計画書(86.4%)と同意説明文書(81.8%)、臨床研究実施計画届出書(72.7%)、COI関連書類とモニタリング手順書の作成(いずれも68.2%)が挙げられた。【結論】当センターの特定臨床研究の新規審査申請に至るまでの支援は研究者から高い評価を受けていた。一方では統計関連の提案について改善すべき点があることが明らかになった。本年から生物統計家が配属され、今後の支援の改善とさらなる満足度の向上が期待できる。