【背景】ICHGCP-E6が各国で合意されRBAに基づく試験の実施が求められており本院で実施する医師主導治験においても、品質マネジメント活動を実施している。特にその中の取り組みである中央モニタリングは重要な位置付けにあるがデータマネジメント(DM)活動への効果の客観的な評価はされていない。
【目的】品質マネジメントにおける中央モニタリングの効果を明らかにし、DM業務の効率化を目指す。
【方法】本院でDMを行いeCRFでデータ収集をした中央モニタリング未実施の特定臨床研究(対象疾患:関節リウマチ、症例数:211、施設数:27、開始:2016年4月。以下、特定)と、隔月の中央モニタリングで、関連部署間で問題点の共有及び改善策の検討を実施した医師主導治験(対象疾患:COVID-19、症例数:123、施設数:10、開始:2020年7月。以下、治験)において、DM担当者が発行したクエリ(DMクエリ)の件数を被験者の安全性と結果の信頼性に影響を与える重要データに限定し、入力催促、不整合(フォーム間の齟齬、外れ値等)の確認、逸脱の確認に分類して集計する。またDMクエリによりデータが修正された割合を調査する。
【結果】重要データ項目の総入力数は特定、治験でそれぞれ11567件、14098件、DMクエリの総数は418件、47件、その内訳は入力催促が118件、8件、不整合の確認が190件、31件、逸脱の確認が110件、8件であった。それぞれ1症例当たりに発行したDMクエリは1.98件、0.38件で治験は特定と比べ約1/5であった。
また、特定、治験共に不整合の確認のために多くのDMクエリを発行していたが、それぞれクエリによるデータの修正率は9割以上であった。
【考察】定期的に集積データの評価・分析を行う中央モニタリングの実施により、リスクの高い施設を早期に発見し、DMクエリ以外の方法によるアプローチがなされた結果、eCRFへの誤ったデータ入力自体が減りDMクエリが少なかったと思われる。重要データ項目の不整合は、試験結果に影響を与えるため修正が必須であり本調査でもDMクエリによる修正率が高くDMによるデータレビューで注力すべき点である。入力規定やeCRFデザインの作り込みで不整合データの入力を防止することは、DM業務の効率化に有用と考えられる。
【結論】中央モニタリングの実施はDMクエリの削減に繋がり、注力すべきDM業務にリソースを割くことを可能にする。今後はより効果的な中央モニタリングのツールを確立していく必要がある。