【目的】特定臨床研究は臨床研究法による規制対象であり、倫理指針に基づく研究と比較し、より厳格に遵守内容や報告事項が定められている。当臨床研究センターでは、2018年10月から特定臨床研究全例にCRC支援を開始した。専任CRC 3名で開始した支援体制は現在5名に増員し、1名あたり平均17課題を担当している。より多くの課題に効率良く対応するため、リスクの発生頻度や影響度の高い、1)選択除外基準の確認、2)同意書の適切な管理、3)疾病等の有無の確認、に焦点を絞って支援を行ってきた。本調査では、これらのCRC支援による成果を集計し、CRC支援が特定臨床研究の品質向上に寄与したかを検証した。【方法】臨床研究法の施行により特定臨床研究に載せ替えられた59課題のうち、モニタリング・監査を受けた16課題について、モニタリング報告書・監査報告書より指摘された事項や報告内容をCRC支援開始前後で評価した。対象課題は2016年7月以降に順次開始され、各課題の載せ替え申請が完了するまでの期間を支援開始前とした。載せ替えの申請は2018年10月から2019年12月の間に完了し、各課題載せ替え後から2022年6月までを支援開始後の期間とした。【結果・考察】モニタリング報告書・監査報告書での指摘件数は、全期間で合計244件であった。重点的に支援を行った項目において、「選択除外基準の不遵守」(前27件/後0件)、「不適切な同意取得」(68件/9件)、「疾病等報告等の不適切な対応」(7件/1件)と、CRCの介入により顕著な改善が見られた。その理由として1)選択除外基準について、新規患者がいる場合はCRCへの連絡を必須とし、CRCがダブルチェック機能を担ったことで不適合の発生を防ぐことができた、2)同意書はCRCが回収・管理することで不適切な記載や紛失を防ぐことに貢献できた、3)疾病等報告等は、効率的な支援に向けて主に電子カルテで患者情報を確認し、電子カルテへの付箋、メール、電話等で責任医師・分担医師にアラートを出すことで、タイムリーな報告に寄与できたことが考えられる。一方2)ではCRCのチェック漏れが発生したため、版数管理、記載内容の確認、紛失防止に焦点を当て、昨年9月より回収・保管の手順を明確に整備しさらなる質の向上を図った。【結論】リスクの発生頻度や影響度の高い項目についてCRCが介入し、特定臨床研究を支援することで、リスクを軽減して効率よく品質を向上することができた。