【目的】北里大学病院臨床研究部で2020年8月より支援したCOVID-19患者対象の医師主導治験は入院患者対象であり、症例エントリーでは、入院措置の変更、宿泊療養施策などの影響を受けた。安定的な症例エントリーのために地方自治体、地域医療と連携した被験者リクルート体制(以下、東京スキーム)を構築した。その取り組みを報告する。【方法】参加施設(2施設)、東京都福祉保健局、参加施設を管轄する保健所とPCR陽性患者の入院調整の流れを構築した。東京都医師会へは、会員医師に対して被験者リクルートへの協力を要請した。東京都内のクリニックでPCR検査を受けた患者には、本治験のリーフレットが配布され、本治験に興味がある場合、外部委託で設置したコールセンターへ連絡し、コールセンターによる事前スクリーニング(以下、SC)が行われた。SC適格者は、保健所からの連絡時に本治験への参加意思を伝えることで、保健所と東京都福祉保健局で入院調整がされ、東京スキーム参加施設へ入院する体制とした。【結果・考察】東京スキームの稼働期間2021年6月17日~同年9月30日(内、緊急事態下1か月半)でのリクルート状況は、入電者117名、SC実施者27名、SC適格者14名であり、被験者候補の抽出は可能であった。ただし、入院した被験者候補は3名、症例登録は1名であった。症例エントリーに繋がらなかった理由は、参加施設が少ないため、感染動向による参加施設の入院受け入れ可否が影響したと考えられる。また、被験者の参加施設へのアクセス等を考慮し、SC実施者の居住地を参加施設近辺に制限したため、入電者のうちSC実施者が1/4以下となった。本スキームは、社会的要請などの背景よりスピードを優先させたため、参加施設数が少ない状況で稼働したが、地域を広げ参加施設数を増やすことでSC実施者の割合やエントリー数は増加すると考えられる。さらに、治験参加希望者がSCを受けた上で来院することは、参加施設のメリットに繋がり、エントリーに直結する可能性が高い。一方で、地域の拡大、施設数の増加は、複数の自治体との調整、参加施設へのアプローチ、コールセンターの教育、協力を依頼する地域医療の拡大など調整事務局の負担が増し、マンパワー、費用ともに課題が残る。【結論】COVID-19のような急性疾患の治験では、東京スキームは有効なリクルート方法である。但し、今回の体制では、恒常的に稼働させないと十分な機能が果たせないと考える。