【目的】学術誌は、臨床薬理学領域における情報源の一つとしても広く参照されている。本研究では、情報源へのアクセスのし易さ(アクセシビリティ)という観点からオープンアクセス化の現状を明らかにすることを目的に、定量的分析と共に課題を整理した。
【方法】定量的分析は2022年3月に実施し、対象はWeb of Science Core Collection(Clarivate社の基準により一定の質が担保された査読付き学術誌を中心とした論文等のコレクション)に収載された原著論文および総説(総説論文)とした。なお、全体像を俯瞰するべく分野については限定しないものとした。2006年および2021年時点の情報を収集、対象の合計論文数およびオープンアクセス論文数をカウントし、その割合を算出することで比較した。また、関連の課題する課題を整理した。
【結果・考察】2006年時点では、収載された1,066,475報の対象論文のうち238,552報 (22.3%)がオープンアクセスであった。一方、2021年時点では、収載された2,665,078報の対象論文のうち1,306,370報(49.0%)がオープンアクセスであった。論文のオーブンアクセス比率は年々高まっており、2021年時点では約半数に達していた。このことから、情報源へのアクセシビリティは向上しているものと考えられた。一方、本研究は対象領域を絞っていないことから、臨床薬理学領域における特有の状況については評価できていない可能性がある。また、学術論文の出版に要する著者の費用負担、出版論文数の増加による質のバラツキが主要なものとして挙げられた。
【結論】学術誌のオープンアクセス化は年々進んでおり、情報源へのアクセシビリティは向上している。一方で、費用負担や質の問題については、エビデンスの創出や参照の観点で無視できない臨床薬理学領域に特有の状況を明らかにすることは、今後の課題の一つである。