【はじめに】本邦における治験の費用算定においてはポイント表を用いられている。海外ではFair Market Valueに基づくベンチマーク型コスト算定(以下「BC型コスト」という)が用いられているということを耳にするようになってきた。【目的】当院においてBC型コストのパイロットに参加したため、その1試験における経験を踏まえ、良かった点、改善すべきと考えられる点について共有をしたい。【方法】国立病院機構本部による事前調整を経て、当院には2020年6月にBC型コストのパイロットへの参加打診をいただいた。その後、院内、依頼者との調整を経て同年10月にIRBの審議・承認、契約締結、同年12月にスタートアップミーティングを実施し、2021年6月に被験者より同意取得、治験薬投与開始となった。【結果】現在のポイント表を用いた算定、請求と比較するとBC型コストは業務工数が多い結果である。しかしながら、追加となる業務に対価(費用)が発生することについては院内の関係者からは肯定的な聞かれた。しかしながら、BC型コストのベースとなっている案に対して医療機関として十分に納得が得られているとは言えない状況であった。【考察】BC型コストの導入について、課題は多くあるものの、対応(業務)に対価が発生するという点においては医療機関にとっても意義のある方法であると考える。本算定方式は現時点においては医療機関、依頼者ともに経験が限られることから、双方で多くの経験を積むことで良い面、改善すべき面が見えてくることが考えられ、まずは1試験から取り組み、医療機関、依頼者において経験を重ね、BC型コストのコンセプトである、双方にとって納得のいく費用においての治験実施が望まれる。また、新型コロナウイルスの流行により依頼者等の施設への訪問に対する考え方も変わってきている。新型コロナウイルスの流行前後の状況を振り返り、業務分担、その業務に対する対価についても見直す機会なのかもしれない。