【目的】医師主導治験の実施数は企業治験の約1/10(PMDAのHPより)であることからも、実施医療機関では経験の蓄積中であり、その中で新しい規制の発出や改正への対応には苦労を伴う。本院主導の医師主導治験における安全性情報の入手につき、(1)治験使用薬(被験薬を除く、以下同様)及び(2)市販医薬品を治験薬に供する場合の被験薬について検討した。【方法】製造販売元からの安全性情報入手には限界があることから、PMDAより提供されている「副作用が疑われる症例報告に関する情報(以下、JADER)」より副作用のシグナル(企業報告における重篤・未知副作用)を確認し、入手する安全性情報の指標とした。(1)治験使用薬の届出及び副作用報告につき経過措置にある3治験につき、治験使用薬の製造販売元6社に安全性情報の提供可否を聴取した。(2)製造販売元ではなく治験調整医師が治験薬提供者となる医師主導治験では、事務連絡(H31.3.29発出)に従い市販品を購入し治験薬の包装を行った。【結果・考察】(1)治験使用薬の製造販売元6社は、共に提供予定はないとの回答であり、内2社は、治験使用薬の副作用報告は、被験薬の製造販売元からの情報に含まれるとの考えであった。そこで、JADERより各治験使用薬[1]100症例中 [2]「試験」からの報告を対象に、[3]被験薬が使用する医薬品に含まれている副作用報告を確認したところ、7つの治験使用薬につき、9件, 4件, 1件であり、その他は0件であった。(2)事前にPMDAに相談し、本院内で並行して実施されている同被験薬の別治験において、治験薬提供者から提供される安全性情報を本治験の治験調整医師へ共有する手順を講じた。当該被験薬は市販後の使用期間が長く、当該治験薬提供者は後発メーカーであるため、提供される安全性情報は市販後の副作用報告であった。このように製造販売元にて臨床試験が行われない場合や製造販売元から安全性情報を入手できない場合を想定し、JADERより(1) [1][2]について検出した副作用報告は25件であった。【結論】(1)治験使用薬ごとに副作用のシグナルを確認することで、収集する安全性情報を規定することができる。「PMDAメディナビ」を活用し、該当する治験使用薬の情報を入手することとした。(2)市販品を治験薬とする場合、製造販売元から安全性情報の提供を受けられない場合には、副作用のシグナルを確認し、安全性情報を収集する方法を検討することが可能となる。