【目的】北里大学病院HRP(Human Research Protections)室(以下、当室)は、病院長のもと設置された臨床研究管理部門である。活動の一つに臨床研究(以下、研究)にかかる相談対応がある。今回、当室に寄せられた相談内容をもとに当院における研究環境の課題を整理し、改善策を検討・実施したので報告する。
【方法】2021年4月1日から2022年3月31日に当室に寄せられた相談を調査対象とした。調査項目は、相談者背景(職種、所属)、相談内容(相談に係る規制・指針の種類、内容等)、相談への対応結果(対応者職種、当室での対応可否等)とした。調査結果から課題を整理、改善策を検討・実施した。
【結果・考察】相談件数は延べ283件で、その内訳は1)申請手続きに関するもの188件(66.4%)、2)個別研究の内容に関するもの 81件(28.6%)、3)その他14件(4.9%)であった。1)の内訳は、実施許可申請等の院内手続き63件(22.3%)、他機関で一括審査をうけるための手続き46件(16.3%)、院内手続きの進捗状況27件(9.5%)、北里大学の倫理審査委員会の申請方法26件(9.2%)、2)の内訳は、研究計画書等の資料作成に関するもの17件(6.0%)、倫理審査の必要性16件(5.7%)であった。相談内容を規制別にみると「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に基づく研究の相談が217件(76.7%)、臨床研究法に基づく研究の相談が38件(13.4%)であった。
本結果から、A.申請手続きの分かりにくさ、B.手続きに要する時間の長さ、C.研究者等の研究関連規制の理解不足が課題として考えられた。Aに対し、申請手続きの案内方法を見直し、ホームページに手続き方法と必要書式を掲載、研究者に周知した。A,Bの改善に向け、実施許可申請手続きの電子システム化、手続きの簡素化、簡単ガイド、申請資料チェックリストを検討、導入に向けた準備を開始した。Cについては、臨床研究支援部門等と連携した取り組みが必要と考えられた。
【結論】臨床研究管理部門への研究者の相談を分析することで、当院における研究環境の課題、特に申請手続きの煩雑さや実施許可までの時間、関連規則への理解不足を明らかにし、具体的な改善策を検討することが出来た。